第十九話 空と異世界転移狐娘の謎
場所は変わらず東京日本、ヒーロー養成学校寮の空の部屋。
時はシャーリィがこの世界にやってきてから十数分後。
「と、こんな感じなんだけど」
空は現在に至るまでに、シャーリィに彼女の現状について説明していた。
それらをまとめると、こんな感じである。
●この世界は『地球』という名称で、シャーリィが居た『ファルネール』ではない。
●シャーリィが地球に来れた理由は空の異能『道具箱』のせいである。
●実は空は地球人であり、ファルネール人ではない。
他にも、地球では獣人や魔物が存在していないこと。
などなどの細かいことを説明した。
さて。
それを聞いたシャーリィの第一声が。
「へー……それより、クー! これから何して遊ぶんだ?」
と、早くも話を逸らしてくるシャーリィ。
空はそんな彼女へと言う。
「ちょっと待った! え……シャーリィ、ひょっとして信じてない?」
「異世界転移ってやつの話か? もちろん信じてるぞ! 実際、シャーリィは変な歪みみたいのを通ったからな! それに、クーの話ならなんでも信じる!」
「驚いたり、焦ったりしないんだ……」
「その必要がない! シャーリィはクーが居れば安心なんだ!」
と、正座したまま尻尾をふりふりシャーリィ。
彼女はさらに続けてくる。
「クーは驚いたり、焦ったり……不安そうなにおいがする! シャーリィがここに居るのが迷惑じゃないなら、どうしてそう感じてるんだ?」
「僕は……」
空が不安なのは自らの異能に関してである。
ここに来て、その能力の詳細がわからなくなったからだ。
「さっき説明した僕の異能で作り出したゲートなんだけど。ゲートは僕と僕の持ち物しか通さないはずなんだ……」
これを簡単に表すとこんな感じだ。
空が文房具屋で購入したシャーペンをA。
空が友達から借りたシャーペンをB。
Aをゲートに向かって投げると、それはゲートを通過し向こう側の世界に行く。
一方、Bをゲートに向かって投げると、弾き返されてしまうのだ。
要するに重要なのは所有権の問題だ。
空の所有物でなければ、ゲートは絶対に――。
「クー! そんなの簡単だ!」
と、空の思考を断ち切り言ってくるシャーリィ。
彼女はベッドの上にちょこんと座り、尻尾をふりふり言ってくる。
「シャーリィはクーの奴隷だ! シャーリィはクーのものだから、ゲートを通れたんだ!」
「そんなわけ――」
「シャーリィの心も体も、クーのものなんだ! これでそれが証明されて、シャーリィはとっても嬉しい!」
「わ、ちょ――っ!? 急に抱き着いてきたら危ないよ!」
空は飛びついてきたシャーリィの頭を撫でながら考える。
(シャーリィの言ったこと、理屈としては筋が通ってる。まぁ詳細条件はわからないけど……)
それは今考えても仕方のないことに違いない。
(今日はせっかくだから、シャーリィをおもてなししよう)
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