第10話 決意


「それにしても睦月さんのお部屋はシンプルなんですね。男の人の部屋はこうなのでしょうか? 初めて見たのでわからないのですが」

「あ〜。俺特に何の趣味もないから物が少ないんだ。多分普通の高校生の部屋よりも何も無いと思う」

「そうなのですね。でもその分綺麗です。イメージですけど男の人の部屋はもっと散らかっているかと思っていました」

「別に綺麗好きという訳でも無いんだけど、物がないから散らかりようがない感じかな。はは………」


自分で言っておいてあれだが、ちょっと悲しくなるコメントだな。

俺の部屋には荷物が少ない。

最低限生活に必要なものと学校に必要なものぐらいしか無い。

食べ物もスーパーにその日必要なものはを買いに行くぐらいしかしないので冷蔵庫の中もほとんど空の状態だ。

とてもじゃ無いが女の子が暮らせる状態には無い気がする。

これから大丈夫なんだろうか。心配だ………

一通り部屋の中の説明をしてから依織が持って来た荷物を片付け始めた。

見る限り最低限の物しか持ってきてなさそうなので、後でもう一度取りに行ったほうがいいのかもしれない。

女の子は身嗜みの為に色々と必要なのだと思うが、そう言った物が殆ど無いように見える。

それと今気がついたが、すぐに依織の記憶が戻らなかった場合は、この部屋から通う事になるのだろうから、制服とか必要な物を取って来ないといけない。


「依織、遠慮して荷物減らさなかった? もっと持って来ていいから後で取りに行こう。それと制服とか教科書とかも必要だと思うから」

「はい………ありがとうございます」


やっぱり俺に気を使って遠慮してたのか。声をかけると依織が少し恥ずかしそうな表情を浮かべており、少し頬が赤い気がする。

また変に気を使わせてしまったようだ。俺がもう少し気を使ってあげるべきだった。


「あっ! そういえば退院したら依織のママに連絡する約束してたんじゃ」

「そうでした。今からしても大丈夫ですか?」

「もちろんいいよ」


退院してからテンパリ気味で連絡するのをすっかり忘れていたが前回の電話で確かに約束したと思う。


「もしもしママ。うん大丈夫…………。うん睦月さんと一緒。うん………………そう。優しいから…………うん。それじゃあ代わるね。睦月さんママが代わって欲しいそうです」


そう言って依織はスマホを俺に渡して来た。


「はい高嶺です」

「睦月くん、本当にありがとう。あなたが依織と一緒にいてくれて本当に良かった。パパとも話して睦月くんがいてくれて良かったって話してたの」

「いや、僕は別に………」

「日本に帰れたらぜひ睦月くんのご両親にも挨拶させてね」

「俺の両親ですか? 今仕事で沖縄に住んでるんですけど」

「こっちからだと、そこも沖縄も変わらないわよ。睦月くん依織の事お願いね」

「はい」


頼まれた以上俺の出来る限りの責任は果たそうと思うが、本当は違うんだよな………

依織のママにも全部元に戻ったら謝らないとな………

それまではしっかりやっていきたい。

俺は依織のママとの通話を終えて決意を新たにした。

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