第5話「うしろ」
「うんうん、だよね。…えっ!!?」
映画館へと向かう途中、俺と彼女が会話をしながら歩いていた時、横にいた彼女が突然驚いたような声を出した。
彼女はそれから急に五分くらい暗い顔になり、俺が「どうかした?」と聞いたら小さな声で「何でもないから早く行こう」と返すだけだった。
そして、映画館に着き、座席へと座ったあとに彼女は周囲を見渡した後で静かにこう言った。
「気づかなかったの?」
思い当たる節がなかった俺が当たり前のように「なにが?」と訊き返すと彼女はさっきの「えっ!!?」という声の理由を話してくれた。
その理由は、彼女が声を出した瞬間にすれ違った人が原因らしく、すれ違った人がどんな人かも覚えていないと言うが、ただひとつだけははっきりと覚えているという。
それは…
「うしろ側に顔があった」
らしい。
歩いていてすれ違った以上、互いに向き合っている為、うしろに顔があるのはあり得ない。
だが、彼女はすれ違い様、見るともなく視界にその顔が飛び込んできた為に声が出てしまったのだと説明してくれた。
その顔は人を憎んでいる様な表情をした女だったらしい…
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