第39話 セシリアに相談......

 午前の授業が終了し、昼休憩となった。セシリアに王宮に来てもらうよう言わないとっ!!


「セシリア、一つ相談があるんだけど……」


「なんでしょう? ユーリ君。また改まって」


 隣に座っているセシリアは、こてんと顔を左に傾け、少し上目遣いをして聞いてくる。


 いつも可愛いがこの姿は更に可愛さを引き立てている。すぐに可愛いと言えればどんなに良いだろうか。でも、言えないんだよなぁ。ミリアには言えるんだけどね。


「セシリア、王宮に来て欲しい」


 ――ガタッ


「セシリア?」


 あれ? またトリップしたのかな?


「ちょっとユーリ!? いきなりどういう事よ!?」


 エレンから抗議の声が上がる。


「え? エレンも王宮に来たいの?」


「そういう訳じゃないっ!!!」


 いちいちエレンは声が大きいなぁ。


「じゃあなんなのさ」


「なんでセシリアにいきなり王宮に来て欲しいなんてゆうのよ。貴族からすれば王宮に来いだなんて怖すぎることなのよ!? 分かってる??」


 へ? なんでそうなるんだ?


「王宮ってのは滅多なことがない限り入れない場所。呼ばれるとしたらとんでもない功績を残した時か、何か失態を犯したとき。本来気軽に人は呼べない場所なのっ!!」


 へぇ、そういう認識なのか。


「へぇ、じゃない! 貴方はもう少し王族としての自覚を持ちなさい!」


 王族か…… 僕の家族は、皆王族って感じじゃないからなぁ。


「ほら! セシリアは半分意識が飛んでるわよ? 早く引き戻してあげなさい!」


 あ、やっぱり意識が飛んでたんだ。


「セシリア! セシリア!」


 力の限りセシリアを左右に揺さぶる。


「はっ!! いけません! お爺ちゃんが向こう岸で手を振っているのが見えました!!」


 それって死にかけたんじゃ?


「セシリア、大丈夫?」


「う、うん。大丈夫だよ! 私みたいな下級貴族の娘で普段は絶対に行くことができない魔界とも呼ばれているあの王宮に行くくらいなんてことないよ!」


 ダメだ。緊張か何か分からない感情がセシリアの中をぐるぐる駆け巡っていて、これまでではあり得ない速度で言葉が飛び出てきた。てか魔界ってなんだ魔界って。


「エレン、どうしようっ!? セシリアが壊れちゃったかもしれない」


「ユーリがいきなり王宮に来て欲しいとか言うからでしょうがっ!! それでなんでセシリアを王宮なんかに?」


「エミリアが『セシリアさんを王宮に連れてきてください!』って言って聞かなくて。それで、仕方なく誘うことに……」


「はぁ」


 エレンは頭に手を当てて呆れたようにため息をはく。


「セシリアも言った通り、王宮は魔界と呼ばれているのは、まぁ知らないわよね。とにかく、さっきも言ったけど貴族にとって王宮は心していく場所なの? そのことを胸に刻んでおきなさいっ!! それとセシリア!!」


「ふぁ、ふぁい!!!」


「王宮に行くとしても、貴方はユーリの客人。ユーリが近くにいるだろうから心配はいらないと思うわよ。それに、王宮に招待されるなんて機会はそうそうないんだから行っておきなさい」


「でも王宮は魔界だってお父さんが…」


「例え魔界だったとしてもユーリが助けてくれる。そうよね? ユーリ?」


 絶対にそうだと言え! という視線がエレンから送られてきた。僕は王子な訳だし、大抵の事は助けてあげられる。


「そうだよ、セシリア。だから一度王宮に来てくれない?」


 う~んと手を顎に置き、悩んでいる様子のセシリア。


「そう、だよね。ユーリ君が近くにいるなら安心かも…… ユーリ君の頼みだもんね。行くよ。ユーリ君」


「ほんとっ!? やったぁ!」


 本当に来てくれるとは思わなかった。これは僕の良い所を存分に見せつけないと。僕が守ってあげるんだ!


「じゃあ早速今週末はどう?」


「うん。大丈夫。じゃあ今週末に」


「分かった。じゃあセシリアの家に使いを送るね。しっかりした人を送るから!」


「ありがとう! ユーリ君!」


 いつものセシリアに戻り、僕の手を握って感謝を伝えてくれるセシリアに、少し、いや大いにドキドキしたのは僕だけの秘密だ。エレンが少しニヤニヤしていたのは気になったけど。


 今週末もセシリアに会えるのか。楽しみだ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る