第30話 遠足⑥

 僕の頭の中に浮かんだ【領地化】という能力。少し目眩がしたくらいでその後使い方が分かってきた。


【領地化】

 現在自分の居る場所を一時的に拠点化できる能力。自分の領地とした場所では【領地内政】のスキルを余すことなく使うことができる。使用時間は24時間。その後1年この能力は使えない。範囲は任意、最大周囲5kmまで可能。


 といった内容だった。一年間この能力が使えなくなるのは痛いが、そのデメリットを考量しても強い能力だと思う。なんだって、一時的に僕の領地にできるのだから。領地化をすれば何か分かることがあるかもしれない。やってみよう。


「ちょっと待ってください! レオ兄、ガイトス先生。僕新しい能力が使えるみたいです。」


「「はぁ!?」」


「ここ一帯を一時的に僕の領地にできるみたいなんです。やってみてもいいですか?」


「何か分からないけど、現状が打破できるのならいいんじゃないか?」


「分かりました! ではやってみます」


「我が名はユーリ・アレクシオール。王家の血を引くものである。ユーリ・アレクシオールの名においてこの地の【領地化】を開始する」


 そう言葉を発した後、領地の淵となる場所から青白い光が立ち上った。


「ふぅ。【領地化】が終わったみたいです!」


「おい、ユーリ。その目はどうした?」


「なんですか? レオ兄。僕の目はどうかしましたか?」


「どうかしたも何も、お前片目が金色になっているぞ?」


「へ? ほんとですか!?」


「ホントだ。誰が見ても分かる。その金の目は変えれそうにないか?」


「う~ん。意識してみてもダメですねぇ」

「力を行使しているっていう証なんじゃないか?」


「そうかもしれません」


 【領地化】をしたことによって片目の色が変わってしまったようだ。だが、視界にはそれ以上の変化が起きていた。ゲームの画面のように、右半分に領地のマップと領地の情報が浮き出て見えるのだ。


 マップには点が表示され、僕の居る場所は某マップアプリのように視線の先に➡がついていた。よく見ると、赤点は敵で、白点は味方の様だ。森の中で3点固まっているのがあるからそれがドルトスたちだろう。幸い周りには敵はいないようだ。これなら助けに行ける。


 領地の情報は他の領地の情報と少し違っていた。



為政者:ユーリ・アレクシオール

人 口:60

兵 数:60

士 気:40

幸福度:40


イベント一覧

・拠点の建設 必要幸福度:80

簡易的に城砦を作ることができる。制限時間後も使用可能


・兵の強化 必要士気:80

兵士の持ちうる力を最大限活性化させる。全盛期の力を得ることができる。


・自身の強化 必要士気:100

兵士の力の1割を足し合わせた力を得ることができる。強化率は兵士の質に依存する。


現時点での戦い勝利確率:30%



 このような情報が出てきた。臨時の拠点であるからだろうか。戦いに関することばかりが書かれている。幸福度はそこにいる人間の満足度で、今向上させるのは難しいだろう。そうなると上げれるのは士気か。その前にドルトスの救出に行かないと


「レオ兄、ガイトス先生。ドルトスの居場所が分かりました。先に連れ戻しましょう」


「「本当か!?」」


「どう言うことなんだ? ユーリ」


「周辺地図が見えていて、敵味方の居るところに点々が打たれているんです。多分敵と味方を判別できるのだと。それで、森の中に3点あるので、そこがドルトスたちの居る場所です。詳しいことはまた今度です! 今は早く動きましょう」


「お、おう」


「分かった」



 ドルトスとはひと悶着あったが無理やり連れてきた。


「なんなんだよ!? 俺は強い。ゴブリンなんてよゆーだぞ?」


「あぁ、そうか。なら、Bクラスの皆を守ってやってくれ」


「はっ、俺様の力が必要なのだな!」


「Bクラスは皆避難してもらっている。その後ろを追っかけてくれ」


「俺様はまだ出る場所じゃないってことだな。ハハハッ。いいだろう」


 少し言い方を変えるだけであっさりと応じてくれた。単純な性格だ。性格を矯正する暇はないからな。


「おい、ユーリ。あんなこと言っておいて大丈夫なのか?」


「大丈夫だよ、ガイトス先生。ああでも言っておかないとうるさいし」


「ま、まぁ、そうだな。で、次はどうする?」


「さっき言ってた通り、レオ兄に迎え撃つ直前に演説をして貰おうかと思ってる。士気がまだ低いから」


「お? 俺の出番か?」


「頼みますよ? レオ兄? ゴブリンの動きが進軍を始めてきているので」


「おう! 任せておけ! 弟よ」


 つい2人で笑いあってしまった。こういう時のレオ兄は心強い。


 領地内に無数の赤点が蠢いていた。ゴブリンの進軍の始まりだ。僕たちはまだ森内での戦いの経験が浅い。迎え撃つならば平地の今いる場所の方が良いだろう。


 ――ゴブリンの大群が今すぐそこまで迫っている。だがユーリは不思議と負ける気がしていなかった。

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