第6話 【鑑定の儀】②
朝食を食べた後、僕は父上と母上、ミリアと共に【鑑定の儀】を行う部屋に向かっていた。
レオ兄は教師を雇って勉強してるから、その勉強があって行けないらしい。エミィも「がんばってー!」って言ってくれただけで、ついてきてはいない。正直、僕のスキルが大したことがなかった時に失望されたりしたら嫌だからね。
◆
部屋に着いてしばらくすると神官らしき服装の男性が現れた。齢五十程に見え、温和な笑みを浮かべながら部屋に入ってきた。
「今回はお招きいただきましてありがとうございます」
「いえいえ、レオルグの時にも視ていただいたので。今回も忙しい中お呼びして申し訳ない。今回もどうかよろしく頼みます」
「陛下の仰せとあらば。それで、今回【鑑定】させていただく方は?」
「ユーリ・アレクシオールと申します。本日はよろしくお願いします。神官様」
「これはこれはご丁寧に。聡い子ですね。それでは早速始めさせていただきましょう。」
「お願いします」
そう言うと、神官様は、紙を取り出し、目を閉じた。
すると、紙が光り始めた。部屋中に光が満ちた後、紙には何かの文字が印字されていた。
「こ、これは!?」
神官様は考えられない! といった様子で紙を見ている。
「どうでしたか?」
「ま、まずは、ユーリ様本人に確認していただきます」
そう言って、神官様が恐る恐る僕に紙を渡してきた。神官様の手が手汗でいっぱいだ。相当イレギュラーなことなのだろう。
◆
名 前:ユーリ・アレクシオール
年 齢:5
スキル:【領地内政】【人徳】
◆
ん? なんか二つスキルがあるんだけど。
「え? なんか意味の分からないスキルが二つもあるんですけど?」
「なっ!!! 本当かユーリ!」
「本当なの? ユーリ」
両親ともに驚いたといった表情を見せた。信じられないと言っているかの様だった。僕はまだなんでそんなに驚いているのかピンと来ていない。
「なんで2人とも驚かれているのですか?」
「それはな、ミリア。【ユニークスキルのダブルスキル持ち】というのは、私たちの初代国王以外確認されていないからだ」
「えっ!?!?!? それって、本当にすごいんじゃ……」
「そうなのです。私も何十年と【鑑定の儀】に携わってきましたが、【ユニークスキル】のダブルスキル持ちというのは生涯で初めての出来事です」
「神官殿、どうかこのことは他言無用で……」
両親と神官様の対応と話の内容を見るに、本当にすごいことなのだと思う。初代国王とは、アレクシオール王国の伝説として語り継がれている。初代国王のスキルというのは明かされていなかったはずだ。情報を持っているのはごく一部の人間ということなのだろう。
「もちろんです。もしこのことが広まってしまえば、ユーリ様は生涯命を狙われることになりましょう。【鑑定】を請け負った私としてもその事態はなんとしても避けたい!」
「それで、スキルの内容はどうだったんだ? ユーリ」
「それが、よく分からないんです。この紙を見てみてください!」
僕が紙を渡すと父上と母上がまじまじと見ていた。だが、いまいちピンと来ていない様だった。
「「【領地内政】と【人徳】!?」」
「そうなんです。なんか漠然としすぎというか......」
「過去にも前例のないスキルが出て【ユニークスキル】であると認定された例があります。私はこれまでほとんどのスキルの報告を受けてきていますが、この2つのスキルは見たことがありません。ですから、ユニークスキルでおおよそ間違いないと思います」
「前例がないということは使い方も分からないと思うのですが、それはどのようにすればよいのでしょうか」
「基本的には過ごしていく中でコツをつかんでもらうしかないと思います。しかし、ユニークスキルは自然と使い方が分かってくると報告がありましたので、その時を今は待つしかないと思います」
「そうなのですか...... 神官様、ありがとうございました」
「未来ある子の助けになるのであれば、老体に鞭を打ってでも来させて頂きますよ」
「神官殿、この度はありがとうございました。今回のことはどうかご内密に......」
「ええ、了解いたしました。では、私は失礼いたします。何か機会が有ればまた!」
「「「ありがとうございました」」」
神官様は部屋から出ていった。いい人そうで良かったな。
2つもユニークスキルかぁ。ユニークって言われると凄い感はでるけど、どんな使い方をするか分からないわけだから、それはそれでしんどいなぁ。でも、神様がどう扱うかは教えてくれるって言ってたからそれに期待するしかないか。
「ユーリ。【ユニークスキル】の2つ持ちは極めて稀だ。これからは色々と面倒なことがあるとは思うが、まずはおめでとう!」
「ユーリ。おめでとう!」
「おめでとうございます! ユーリ様」
「ありがとうございます! でも、僕のスキルは戦闘系のスキルではないみたいですけど大丈夫ですかね?」
「本来王が一番の戦闘力を持っている方が稀だ。それに、このままいけば王になるのはレオだから気にしなくていい。それに、戦闘系のスキルがないからと言って鍛えても意味がない訳じゃない。だからスキルがなくても大丈夫だ」
「そうなのですか...... まずはがむしゃらに努力しようと思います。立ち会ってもらってありがとうございました」
「おう、では、今日はゆっくりしとけよ。色々あっただろうからな。明日からはもう鍛錬と勉強を手配しておくからな」
「げぇ...... 分かりました......」
今日ゆっくりさせてくれるのはありがたいけど、それでも明日から鍛錬と勉強はしんどいな。容赦がない。王族だから仕方がないかもしれないけど、これは死ねる。
とりあえず、神様が夢に出てくるのを待つのみだ。
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