水の惑星
宇宙のどこかにて、攻撃的な戦闘民族はまわりの星々との戦争に明け暮れており、より強い兵器について常に研究をしていた。
あるとき、資源が豊富な惑星はないのかと彼らが望遠鏡で星空を覗いていたところ、青色をした惑星が見つかる。
時間をかけてその惑星を分析した結果、そこには惑星中を覆うほどたくさん"水"があることがわかった。
水。それは、この宇宙でとくに不思議な物質。姿は色のない透き通った液体で、生命を育み形作る役割を担う。
だから、水の惑星には多種多様な生命が溢れている。海の中にも陸の上にも。
水は、海や川、氷や雪、雨や雲などさまざまな形に変身し星中を絶えず旅する。
その旅中で水はあまねく生命に数々の恩恵を施す。
海は魚を育て、雨は森を潤し、川は栄養を運ぶ。
実際に太古の昔のその水の惑星では、川の氾濫で土地が肥えたことで人間は農業ができるようになり文明都市が誕生した。
その星の生命にとって水は必要不可欠なのである。
ところが、水は時として恐ろしい一面も剥き出しにする。
一例に、時間の長短は有れどたとえ金だろうが油だろうが、この宇宙の全ての物質を溶かしてしまうのである。
さらに、水害によって大勢の人や動物が死んだり、地形を侵食したりと、環境に影響を及ぼすこともある。
そのためその星の人間は古代から、美しさと恐ろしさを持ち合わせるそんな水を神様だと拝んできた。
人間にとって、水は畏怖畏敬すべき母なる創造主なのだ。
水は普遍的にある割に、強力な兵器の材料になるまさに理想の物質と見る戦闘民族だったが、彼らの惑星には、水は一滴も存在しなかった。
さっそく戦闘民族は宇宙船に乗り遠征、水の惑星へ侵攻を開始。もし先住民である人間たちが滅びれば、この水の惑星は水の鉱山となり、好きなだけ水を採取することができるのだ。
遥かなる長い時間をかけ惑星に降りた宇宙人たちは人間に、
「惑星上にある水全てをよこせ。さもなければお前ら全員を消し滅ぼしてやる」と脅した。
当然、人間たちは略奪を許すはずもなくみんなが剣や弓矢を持ち抵抗をする。
しかし、宇宙人相手の非常に高度な軍事技術には敵わなかった。
光線攻撃を受けた人間たちの多くは次々と力尽きてはただ倒れていき、危機一歩手前に追い込まれてしまう。
その時だった。
突如として謎の青年が姿を現すと、人間たちにこう訴える。
「水は神、水には神が宿る、水には強大な力が宿る。神がいれば、何も恐れることはない」と。
次に青年は、
「各々で船を作り、船に大事な人や動物の命を乗せなさい。それが完了したら船の上に乗って待っていなさい」と、人間たちに指示した。
それでも、宇宙人は攻撃を止めなかった。大襲撃の最中、人間たちは船を組み立てた。船を作る者を宇宙人の攻撃から守るために自ら犠牲に遭った者もいた。
ようやく全員が船に乗ったところ、地上を覆うほどの巨大な津波と猛烈な雹の弾幕が、巻き起こった。
青年が指を鳴らし、巨大なる奇跡を起こしたのだ。
二つの奇跡が絡み合うことにより、形勢は逆転。先程までの圧倒さが嘘だったかのように、宇宙人は次々と水の中に溺れ、溶け、倒れていった。
こうして、激しい戦いの末に勝利したのは人間だった。
宇宙人は惨敗しながらも、少量だけ水をすくい手に入れることに成功。持参していた容器に注ぎ、故郷の惑星へ持ち帰って行こうとした。
ところがここで問題が起きてしまう。
水の惑星から故郷の惑星までの距離は非常に遠く、早くて何万年もかかるほどあった。
そのため、最新技術で作られた超合金の頑丈な容器も時が経つにつれ、水に溶かされていき、結局すべて消滅してしまう。
容器から解放された水は宇宙船の中をぷかぷか自由に浮遊し始めた。所々船内の壁や精密装置などにぶつかっては、機械に故障を起こしたりした。
しかし宇宙人は人工冬眠中だったためにそれに気づくことができなかった。
やがて人工冬眠の装置も水に溶かされる。
ようやく眠りから覚め、宇宙人が事に気づいたときにはもう遅かった。宇宙船自体が水に溶かされ、完全に故障してしまったのだ。
おわり
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます