出会い系

「出会いたいですか!」


 チビでデブでハゲなおっさんから唐突に。それも大声で問われ、俺は身をこわばらせた。


「出会いたいですか!」


 動揺で硬直する俺に、おっさんは尚も問いかけてくる。「出会いたいですか!」と、何度も繰り返し。少し冷静になった俺は、好奇心も相まって「はい!」と声を張り上げた。


「どんな人とですか!」

「快活なショートカットで……」


 呟くと、おっさんのハゲ頭から髪が伸びて黒髪のショートカットになった。一瞬、驚くも、これはまさかと、次の好みを口にする。


「栗色の髪がいい!」


 おっさんのショートカットが栗色に変わる。俺は鼻息を荒くした。


「しかも巨乳で!」


 むくむくとはち切れんばかりに膨らんだ胸元が、バスケットボール並みの大きさになる。おっさんは胸の重さに耐えきれず、倒れ込んだ。


「それは大きすぎ! Eカップくらい!」


 胸がEカップまで縮む。


「身長は160センチで」おっさんの変貌を前に、目を血走らせながら注文を続けていく。「肌は褐色! 少し垂れた猫目! 筋の通った鼻立ち! くぅ〜いいねぇ! 上唇が少し厚くて、下唇は少し薄め! そうそう! シュッとした顎のライン! なにか足りないな……。あ、そうだ! 色っぽく八重歯も! で、左目には泣きボクロ! もう、最高!」


 興奮して捲し立てる。

 ついさっきまで、おっさんであった俺好みのギャルを前に、早くも股間が脈をうっていた。


「体毛はなしで! ヒゲもなし! お腹は少し筋の入った筋肉質な感じで! あとは、あとは……そうだ! 年齢は二十歳!」


 申し分のない異性の完成に、芸術作品を作り上げた匠の如く、腕を組んで頷く。


「これで完成でいいですか!」


 ギャルは叫んだ。


「いや、性格も改変しよう。普段は男勝りで負けん気が強いけど、恋人の前では甘えんぼ! しかも、恋人とのセックスがめちゃくちゃ大好きで、恋人の言うことならなんでも聞いてしまう!」


 催眠術師になった気分で、俺は彼女の性格をも自分好みに変えていく。


「これで完成でいいのか?」


 男勝りな口調を耳に、俺は頭が落ちそうなほど首を縦に振った。


「最高最高! これで完成!」

「あたしと付き合うか?」

「もちろん、付き合うさ!」


 夜になり。体を重ね合う直前。俺は激しく後悔をした。肝心の逸物を消し忘れていたことに気がついて。

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