3月31日 オーケストラの日

 ルースターは足の指でクルクルと器用にドラムのスティックを回す。赤い髪は風になびき、サングラスが太陽を反射した。

 荷台は混雑してきたがネコはワクワクしていた。バンドのメンバーは今三人。あと一人欲しい。

 青いトラックは歴史あるコンサートホールの横の路地へとゆっくり入っていく。

「もうお前の面倒は見てらんねえよエーゼル! 出て行け!」

 怒声と共にコンサートホールの裏口から長いヒゲをたくわえた男が転がり出てきた。

「けっ。俺のチェロがなきゃてめえらのオーケストラはクソだ!」

 エーゼルは胸ポケットから銀のウィスキーボトルを引っ張り出すと豪快に中身を飲んでいった。

 ネムはエーゼルのボトルと自分のボトルを交互に見た。

「オレンジジュースってわけじゃなさそうだな」

 たしかなアルコールの香りがこちらまで香ってくる。

「なんだあ? おめえらは……ッ」

 五人はそれぞれと目を見合わす。

「わたしたちブレーメンの音楽祭に出場するバンドよ。メンバーはまだ三人だけど!」

 ネコはまた無垢な笑顔を彼に向けた。

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