研究発表!? 求婚者研究・財力編

「クラスの有志のみんなとね、月世界からどこかの竹やぶに降臨? 不時着? した姫のお話について、なんちゃって研究発表したの」

「なんちゃって、研究、発表??」

 そう言いながら、自分の頭上にクエスチョンマークがいっぱい浮かんだような気がした。お嬢様の突拍子の無さにはだいぶ慣れたと思っていたけれど、甘かったか。


「そう。正確には、このお姫さまの求婚者・5人の貴公子についてね」

「…それって、あれですか。姫に無茶振りされて、宝物を求めて右往左往させられた挙句、全員失敗したっていう?」

「そうそう、それそれ。口で説明すると長くなるから、よろしかったら簡単に発表会を再現してみますが、どうでしょう?」

「あ! ぜひ」


「OK! じゃあ、始めるね。対象者は5人の貴公子。彼らが姫に所望された品は、こちらです」

 早速始まった発表会再現。ぱっ、と壁にスライドが投射される。そこには、貴公子A~Eと、宝物の名前。


「何で貴公子の名前、記号化なんです?」

「長くてめんどいし、名前からイメージが沸くのは公平じゃないから」

「…そういうものですか」

「まあまあ、その辺はスルーして。で、肝心なのは宝物と、それを得た手段よ」


 貴公子A 仏の御石の鉢

 貴公子B 蓬萊の玉の枝

 貴公子C 火鼠の裘

 貴公子D 龍の首の珠

 貴公子E 燕の産んだ子安貝


「私が読んだ物語にも出てきたのでしょうけど、よくわからないものもあります」

「そうよね。私もそう思ったわ。Aが、仏様がお持ちだったという、石でできた鉢。Bが、根が銀、茎が金、実が真珠の木の枝。Cが、焼いても燃えない布? 毛皮? Ⅾは、そのまんまね、龍の首にある珠、Eが、燕が生んだ貝、安産の御守りだって」

「どれも、存在するかどうか微妙…。結構な無理ゲーですねえ」

「そうね。こんなこと言う女、願い下げだ! ってならないのが不思議よね」

「それだけ姫が美人だったんでしょうね」

「美人に弱すぎでしょ。しょうもない(笑)」


 さて、と言いながら、お嬢様は次のスライドに移動した。

「これが評価ポイント。4つあって、それぞれ5段階評価します。つまり20点満点ね」

 そう言いながら映し出されたのは、


・財力(課題解決のためどれだけお金をつぎ込んだか)

・知恵

・行動力

・誠実さ


「どうしてこの4つ?」

「結婚相手に求める条件って何かな、って話し合って決めました。誠実さ以外は必須ではないとも言えるけれど、でも一般的にはこんな感じかなって」

「ははあ。財力は、財力そのものじゃなく、使った金額が評価対象なんですね」

「そ。5人とも貴公子だし、噂の美女を妻にしたいと名乗りを上げるくらいだから、皆そこそこ財力はあると思うのよ。だから、彼女のためにどれだけつぎ込んだかを、第一のチェックポイントとしました」

「つぎ込んだ…。なんか身もふたもない感じがしますが、で、点数は?」

「はい、こちらです」


 貴公子A ★★★

  → 石の鉢自体はお金はかかってなさそうだが、人件費を考慮して

 貴公子B ★★★★★

  → 金銀宝石使っている、これはお金がかかっている!

 貴公子C ★★★★

  → 探させる人件費、偽物だが買取の費用もかなりかかっていそう

 貴公子D ★★★★

  → 船を出して大々的に捜索している、人件費もかなりありそう

 貴公子E ★

  → 燕の巣によじ登っただけ、自分で行動したので人件費も軽微


「…ああ、なるほど」

 なかなかよく考えられている、と感心していると、お嬢様は、どんどん行くわよ、と次のスライドに移った。

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