そして最後はハッピーエンド

 シルフェストとの行商交易、最終日。

 依頼人のジャッカル頭の偉丈夫と見目麗しい妖精族の女性は、約束通りに中央広場へやってきた。

 妖精族を捕らえ、「夢への旅路」を作るよう強要していた密売人たちは全員捕らえられ、妖精族の彼女は簡単な聴取の後に解放されたそうだ。

「今日ここに呼んだのは、ちょっといい話があるからなんですよね。あと、今回の依頼料の話」

 リーヴがそう連れて行ったのは、シルフェストの薬屋のテント。ちょうど入れ違いに客が出ていき、中にはリーヴたちと店主だけになる。店主はリーヴを見て笑顔で迎えた。

「あのずいぶん高い値段で持ちかけてきた人、捕まったそうですね。あなたに話を聞いていなかったらどうなっていたことか」

「未遂で済んで良かったです。――ところで、この方が例の「夢への旅路」を作っておられる方なんですけど。彼女とその旦那さんも交えて、交渉を進めてもいいですか?」

 妖精族の彼女が作らされていた薬の在庫は、全て彼女の手に戻ったと聞いている。普通にトラッキルスの薬屋に卸すのでも問題はないだろうが、せっかくなら今後の交流につなげたほうが彼女たちのためであるし、なによりトラッキルスよりシルフェスト相手のほうが高く売れる。

 彼女の手元にある薬をこの商人へ売り、今回の売上の三割をリーヴが諸々の報酬として貰い受ける。そうして商談はまとまった。


「本当にありがとうございました」

 依頼人と妖精族の彼女は深々と頭を下げた。無事で本当に良かったですよ、とリーヴは彼らに頭を上げてもらうよう頼む。

「僕も稼がせてもらったんで、お構いなく。いい仕事になりました」

 そろそろ、空の端から太陽が顔を出しそうな時間帯。朝焼けの空の下でそう笑う。

 それじゃあね、と妖精族の彼女はリーヴと、彼のカバンへ手を振った。リーヴは少し目を瞬かせる。

「見えるんです?」

「強い魔力を持つ子はね」

 隣のジャッカル頭の偉丈夫は首を傾げている。言ってもいいの、と目で問われる。リーヴは人差し指を一本、己の口元に立てた。

 人間の「黙っておいて」のサインは、彼女も知っていたらしい。「はぁい」とどこか甘い声音で笑って、彼女は旦那の腕をとった。

「またね。道具屋さん」

「あんまりうちに縁がない方が良いですけどね。また、何かあったときには」

 陽炎を魅せる魔道具屋へどうぞ。リーヴはそう彼らを見送った。

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