第9話 遅刻した時のルーティン
あの面接から一週間後。あたしは全身がバッキバキになりながらも、なんとか登校しています。
「痛い……筋肉痛……もぅ歩けない……」
[シール張りでこんなになるとはな]
面接に落ちて社会の残酷さを身をもって知ったあたしは、気を引き締めてから数日後の派遣バイトの説明会に臨みました。
ですが、説明会は順調に事なきを終え、いろいろと書類を書いて(字の汚さを遠回しに指摘されて三回書き直しになりましたが)、その翌日のバイトに臨んだのですが。
「違うんですよ!派遣会社のやろーがその日はシール貼りの案件ないって言い出して、兎にも角にも時間がなかったので他のバイトでも構わん!って頼んだら奴ら引越しを紹介してきたんです!体が弱いと伝えたらほんの少しは易しめの現場にしてくれましたが」
[バイトと言えば、貴様の試練も忘れておらんな、そろそろ第一の試練が……]
たまたま同じ現場だったチャラ男が休憩時間に彼女との惚気話をクソでかい声で初対面の相手にくっちゃべっていて、側から聞いて(聞かされて)いたあたしは飯食いながらも食ってる気がせずに死にそうでした。
おまけに帰り際、あたしをナンパしてきましてね。丁重にお断りしたのですが、わざと了承して彼女から平手打ち喰らう場面も見てみたかったですね。
[我の話も聞かず、何一人脳内でくっちゃべっておる。それよりも貴様、今の時間は分かっているのか」
悪魔にそう言われ、あたしはスマホで時刻を確認します。
「はい?今は十時過ぎですが」
[清々しいほどの遅刻ッ!!!なぜ急ごうとしない……のは通常運転であるが、だいいち貴様、家を出た時刻も昨日より数時間も後だったぞ。寝坊でもしたのか?」
そう言えばこの悪魔。家を出るときも目の前に居ましたね。昨日家に入る前に追い返しましたが、本当に毎日ついてくるつもりなんですね。
「今日は学年全員での課外授業があるのです。参加するのもめんどくさいしこんな体なので、ベットから這い出るのに時間かかりまくってもう開き直りました」
[貴様は学校生活を楽しみたいのではなかったのか」
「確かに学校生活を楽しみたいとは言いましたが、楽しくない学校行事なんてこりごりですよー」
というわけでーあたしは学校の最寄り駅「中宮駅」にいます。せっかくなので今日もどこか寄り道しましょう。
「ですが学校周辺のお店は大体攻略したのでめぼしい店はありませんねー。ゲーセンは後で行くとして……とりま迷ったら本屋です!行きましょう!」
[貴様の鶏脳に直接学校に行くという考えはないのか]
悪魔を無視して、あたしは駅のロータリーを進み、駅前通りに出ました。本屋さんは学校とは反対方向にあるので、今日は通りを逆に進みます。そうすると数分で本屋さんに到着しました。冷気を眺めながら漫画コーナーを行き来しつつ暇つぶし。
とは言っても別段買いたい本があるわけではなかったので、三十分程本を眺めつつ本屋さんで涼んだ後、あたしは渋々と学校へ向かいました。
まぁ、ゲーセンは行ったんですけどね。
[ふう、今日も貴様の底知れぬギャンブル欲を止めるのに精いっぱいだったわ]
「およ?」
あたしと悪魔は校門に着いたのはいいのですが──
「珍しく御理瓦先生がいませんね。入りましょう」
[勝手に入れば教師共が憤怒する姿が目に見えるぞ]
「悪魔が何ガキンチョみたいなこと言ってるんですかバレなきゃ良いんですよ。とりあえず部室辺りで暇を潰して……」
「何じゃお前らアアアアアァァァァァァ!!!!!!」
「ふぇ?」
[そら見たことか!]
なんですか、喧しすぎて耳塞いじゃいましたよ!中宮中に響きそうな濁声であたしたちを引き留めたのは、屈強な体躯をした生徒指導の先生……ではなく、青髪サイドテールの華奢な少女でした。
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