第12話 戦友

「彼に出会ったのは、国軍騎士試験に合格し、初めての訓練の日でした」

シェーンは昔を振り返った。

青の騎士は子供の軍養成施設の出で、スラム街でうろついていたところを軍に保護され、養成施設で育てられたとの噂を聞いたことがあったが、真偽のほどは本人からの情報ではないので定かではなかったらしい。

しかし、たしかに瘦せぼそった風もあり、他の者に比べ体は小さく弱弱しかった。

しかし、実技では教官も唸るほどの秀才で、小柄な体から繰り出される突きの応酬には誰も太刀打ちできないほどの腕だった。それと反対に書くことは苦手で試験では劣等生。本を読むことは好きだったみたいで余暇の時間はいつも木陰で本を開いていた。

そんな彼はいつも他人と距離を取って行動していた。周りも・・・シェーン自身もスラム街の人間とは関わらないようにしていた。ほとんどの者が貴族の家柄だったため、そういった素性の怪しいものとは関わらないように教育されていた。

そんな時、ある男爵家の子息が彼に決闘を申し込んだ。話に聞くとその者の婚約者が青の騎士に惚れ込んでいたようだ。

そんなくだらない理由で始まった決闘騒ぎだったが、青の騎士が瞬殺で子息を撃破。皆結果は分かっていたため驚きはなかった。驚いたことと言えば、そのあとの青の騎士の行動。

青の騎士は倒れこんで大泣きしだした、哀れなその男爵家の子息に歩み寄り、片膝をつき、手を差し伸べた。

「お前の彼女に対する気持ちの強さが分かった」

子息はムッとした顔を向けその手を払いのける。

「何がわかるんだ!俺を馬鹿にするのも大概にしろ!!」

それに対し、青の騎士は「わかるさ」と子息をまっすぐ見つめた。

「決闘前、手が震えていた」

彼は微笑んだ。

「俺を認めていたんだ、お前は」

子息が呼吸を荒げ、拳を強く握った。

「負けることも分かった上で、俺に挑戦したんだ」

子息は握った拳を青の騎士に向けた。周りの人間が止めに入ろうと動いたけれど、その拳は青の騎士の手のひらに飲み込まれた。

「それは、騎士にとってとてもとても大切な素質だ、そうは思わないか?」

その言葉に子息は言葉が出なかったらしい。こいつは何を言っているんだとそんな顔だった。

「大事な者のためなら、立ち上がれる強さだ、そんなかっこいいことがあるか?」

子息は、何かがストンと落ちたそうだ。青の騎士は、自分よりも弱い者でも強いといった。かっこいいと。ああ、こいつはバカなんだと。

「また、いくらでも相手をしてやる、そして共に強くなろう」

子息は、おかしくなって、急に笑いだした。これには青の騎士も目を丸くしたようだ。

「こんの、脳筋野郎!!!」

そして、青の騎士も笑い出す。

「俺は、シェーン」

シェーンが手を伸ばす。

青の騎士は微笑みながら、その手を引き上げる。

「俺の名前は、サリだ」





























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