暴動仮面

芥子川(けしかわ)

第1話「打ち壊し」

我輩は暴動仮面。

常に暴動を『主催オーガナイズ』する者…。この物語は、我輩の活躍や日常を記す事にする。


とくと聞き給え。



「……さぁ! 今こそ始まるのだ!! 我輩の革命がッ!!!」

「……ってな感じで、暴動仮面さんは私達の味方になってくれたんです!」

「そうだったのか……」

「はい! それで、今度の打ち壊しにも来てくださるんだね?」

「もちろんだ。我が同志よ」

「ありがとうございます! それじゃあ早速行きましょうか!」

「ああ……そうだな。行くぞ暴徒達よ! 我らの正義を見せつけてやるのだーっ!!」


そうして我らは悪徳コングロマリット米問屋の商店を襲撃した。暴徒達は次々と店舗を襲い金品を奪っていく。


その様子に私は感動した。

なんという団結力だろうか! これこそが本当の市民の姿なのだ! そして、私も彼らに負けじと襲撃に参加した。


だが、その時である。

「貧乏人共! そこまでだ」

やはり来おったか、悪徳次長代官『豪突ごうつく・バール』め!

奴が現れた事で暴徒達の士気は一気に下がった。


「おい、なんだあのハゲデブは!?」

「あれが噂の鬼畜次長かよ!」

「こっちに来るぞ!」

暴徒達が口々に騒ぎ立てる中、豪突は趣味の悪い柄の扇子をヒラヒラさせつつこちらに近づいてきた。


「お主ら、わしの店で何をやっておるか? ここはわしの管轄内だぞ。それにしても見苦しいのう。まるで豚のような顔つきをしておるわ。ハッハッハー!」


豪突は下卑た笑い声をあげた。


「うるさいぞ! 悪徳次長代官!」

数人の男衆が豪突に罵声を浴びせるが、豪突はそれを一瞥すると袖口から十手を取り出し叫んだ。


「おうおう、下人共がさえずるじゃねぇか! このテーザー十手で教育を施してやるぜぇ!」


豪突は暴徒達に電撃を放った。


ビリリリッ!! バリバリィィイイッ!!!


「うぎゃああああっ!!」

「ひいいいっ!」

暴徒達は悲鳴を上げながら倒れた。


幸い我輩が着ているスーツは絶縁仕様の為、感電する事はなかったが、それでも全身から力が抜けていくような感覚に襲われた。


「さぁて次は誰だ? このテーザー十手で教育してくれるわ!」


豪突は再び電流を放つ構えを見せた。

しかし次の瞬間、暴徒の中から一人の男が飛び出してきた。


「よく言ったぜハゲ野郎!」

男は暴徒のリーダー格の男であった。彼は手に持っていた棍棒を振り上げると豪突に向かっていった。


「何ぃ?」


ドゴォンッ! 鈍い音が響き渡った。どうやら豪突の頭に一撃を食らわせたらしい。


「くそっ! 小賢しい真似をしおって! こうなったら全員まとめて叩き潰してくれようぞ!」


豪突の怒号が辺り一帯に響いた。


すると、藪からバイオ岡っ引きロボが数体飛び出して来た。素行不良で処分された岡っ引きを改造して作られたバイオメトリクスロボだ。


「行け! バイオ岡っ引きロボども! あの馬鹿共に思い知らせてやれ!」


バイオ岡っ引きロボは暴徒達に向けて走り出した。


我輩はミスリル製日本刀でバイオ岡っ引きロボを両断した。身体が動けるようになったのだ。


「暴動仮面殿!」

暴徒の一人が我輩に声をかけた。

「大丈夫ですか?」

「問題ない」

「ありがとうございます! おかげで助かりました」

「礼には及ばん。それより今は目の前の敵に集中するのだ」

「はい!」

そうして、暴徒側の善戦により打ち壊しは成功裏に終わった。


豪突は暴徒にリンチされ、身ぐるみ剥がされていた。物騒なテーザー十手は本人の指紋が無いと使えないのでその場で破壊された。


そして、その日を境に暴徒達は街の治安を守るヒーローとなったのである。

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