【一章完結】世界最強の鍛冶師~闘えない無能はいらないと勇者パーティを捨てられた鍛冶師、SS級の危険ダンジョン『ハーデス』で装備を鍛えて最速で最強の冒険者に成り上がる〜
第19話 魔剣を作ると美少女も付いてきた
第19話 魔剣を作ると美少女も付いてきた
魔石を手に入れた俺は、早速、伝説級の武器を作る事にした。
プラチナゴーレムがドロップした『ヒヒイロカネ』そして、多頭竜(ヒュドラ)がドロップした『魔石』。
この二つのアイテムが揃った事により、伝説級の武器を作る前提が整ったというわけだ。
俺は楽しみだった。ワクワクした。やはり、鍛冶師として一番楽しみなのはこの瞬間だ。
未知なる物を創造し、現実のものとするこの瞬間こそが一番楽しい瞬間なのだ。
俺は『ヒヒイロカネ』と『魔石』をベースに、伝説級の武器を作り出す。
「……できた」
いつものよりもずっと長い時間をかけ、武器作りが完成する。会心の出来だった。それだけの手応えがあった。
俺の目の前には輝かしい光を放つ、朱色の剣があった。これが俺の作った伝説級の武器だ。勇者ロベルトが持つ……聖剣エクスカリバーに匹敵しうるだけの剣。真っ赤な炎のような剣。
その剣の銘(な)は――。
『魔剣レーヴァテイン』である。
聖剣エクスカリバーが聖属性最強の剣だとするならば、この『魔剣レーヴァテイン』は炎属性最強の剣である。
「よし……試しに振ってみよう」
俺は魔剣レーヴァテインを手に取った。
ぶん! ぶん! ぶん!
俺は何度か、剣を振るってみた。振ってみたところ、問題なく振れた。重くもなく、軽くもない。
実戦で使ってみないとわからないけど、今のところはなんともなさそうだった。
――と、そう思っていた時の事だった。
「ん? なんだ? う、うわっ!」
作ったばかりの『魔剣レーヴァテイン』が突如として輝かしい光を放つではないか。
俺は思わず、目を覆ってしまう。しばらくして、光が収まった。俺は恐る恐る、目を開けた。
「……な、なんだ、これは……」
俺は一瞬、目を疑った。さっき作ったばかりの魔剣レーヴァテインが消失していたからだ。
その代わり、そこに居たのは一人の少女だった。煉獄のような赤い髪をした、可憐な少女。凛とした、真っ赤な瞳をした少女がそこに佇んでいたのだ。
あの魔剣レーヴァテインと入れ替わりになるように。
一瞬、驚きはしたが、伝説級の武器や防具の中にはまるで人間のように自由意志を持っている物もあるらしい。そしてその中には人間のような姿形に変身(トランス)できる物も。
彼女もその結果として生じたのだろう。そう考えれば動揺も段々と治まってきた。
「はぁ……」
俺は安堵の溜息を吐く。
「君が魔剣レーヴァテインの成り代わりか……」
「はい。ご主人様。この魔剣レーヴァテイン。あなた様の剣(つるぎ)となりて、必ずや敵を粉砕してみせます」
魔剣レーヴァテインの成り代わりが俺の前にかしづく。
「いや、そういうのはいいから……」
「そうですか……」
渋々、彼女は立ち上がる。
そういう対応には慣れていない。思わず、かしこまってしまう。
「名前はなんて言うの?」
俺は訊いた。
「名前はありません。強いていうなら、この『レーヴァテイン』という、銘こそが私の名なのです」
『レーヴァテイン』か……。それだとあまりに長ったらしくないか。それに、あまり女の子らしくない名だ。可愛い名前ではないだろう。
「それだとちょっとな……」
「不都合でしたら、ご主人様が名付けて頂いて構いません」
「……そうか。だったら……」
魔剣レーヴァテインは炎属性の剣だ。斬ると同時に相手を燃やし、溶かしつくす。
「メルティなんてどうだ?」
「メルティ?」
「溶けるって意味合いが込められているんだ。それに人間界で女の子の名前として使っても差支えがない」
「わかりました……では私の事はメルティと呼んでください。ご主人様」
「そのご主人様っていうのもやめてくれないか?」
なんだか落ち着かないのだ。『ご主人様』と呼ばれるのは……。
「私はご主人様の名前を知りません……」
「そうだったな。俺はロキって言うんだ」
「わかりました。ではロキ様とお呼びします」
そこは変わらないんだな……。まあいい。俺は溜息を吐いた。
「それでロキ様、私は何をしたらよいでしょうか?」
「地上に出たいんだ……。この地下迷宮(ダンジョン)を抜けて地上へ。外へ出る手伝いをしてくれ」
「はい。わかりました」
「ちなみに、メルティは元の剣の形にも戻れるんだよな?」
「それは勿論であります」
「良かった……必要な時は頼むな」
「はい!」
こうしてメルティが俺の仲間になった。俺達の地下迷宮(ダンジョン)での闘いは続いていくのであった。
――だが、地上に出れる時は確実に訪れようとしていた。
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