第48話 素直になったか

「はい、じゃぁ今からサルでも出来るクロール講座始めていきたいと思います~」


「誰がサルよ!バカにしてるわけ!?」


 5分程休憩を挟んだあと、早速クロールを教え始めた。


「ただ分かりやすいっていう比喩表現なんだが?」


「だとしてもバカにしてるとしか思えないんだけど!?」


「してない!少しはしてると思うけど、してない」


「少ししてるんじゃないの!」


 だが、クロールを教えるどころではなく口喧嘩が始めった。

 まぁ俺が原因なんだけど、仕方がない。

 だって、本当にサルでもわかりやすく教えるから。


「はいはい、もういいだろ?教えてやらないぞ?」


「っ……………もういいわ」


 不機嫌になりながらも、千葉は折れて教えられることにした。


「なら最初はバタ足からだな。基本中の基本」


「バタ足なら出来てたじゃない?さっき」


「あれはバタ足というよりも、もがいてただろどう見ても」


「そうなのね…………まぁ、そう言われたならバタ足から教えてちょうだい」


「りょ、了解した」


 やっと教えられる立場を理解したか。

 いつもなら出来てると駄々こねて拒みそうなのに。というか逆ギレまでしてきそうなのに。

 素直になってくれてありがたい限りだ。


「まずはプールの縁を掴んでバタ足の練習だな」


「よく水泳の授業でやってるやつ?」


「それだ。形からやっておかないと」


「分かった」


 と、千葉は縁を掴むと、両足を水面に浮かせてバタ足を始める。

 水面から浮かぶ太ももや鼠径部がなんともエロい。エロ過ぎる。


 プリっとした白いお尻、太っていると言っていたが、あまり気にならない。逆に程よい肉付きでベストな体系だと思う。

 最高の二文字に限る。


「もっと足の先伸ばして、水を蹴る感じでバタ足だ」


 その後ろ姿全体をチラ見しながらも、ちゃんと指導を始めた。


「こ、こう?」


「いや、もっと伸ばせ。あと膝だけで動かすんじゃなくて足の根本から動かす」


「どう?いい感じになった?」


「そうそう、いい感じになってきた」


「でもキツイんだけどコレ」


「あと20秒キープな」


「鬼すぎない!?超しんどいんだけど!?」


「やる気あるんだろ?なら頑張りな」


「おに教官だっ…………」


 苦しそうな顔をして、息を切らしながらこちらを見て来る千葉。

 そんな可愛い顔しても意味ないぞ?今の俺は鬼だ。

 やる気があるならしっかりと指導もしないとな。


「ちょ、ヤバっ……………攣りそう………」


 そう言いかけると足がピタリと止まり、縁から手が離れると千葉は一気に体が沈んでいった。







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