第114話 末路。
アナグラを練習して、ログアウトしてケモニウムを摂取して、補充したらアナグラ行って、練習して、ケモニウム摂取する為に帰って、練習して、摂取して、練習して…………。
そんな生活を続けた結果、ケモニウム依存症が深刻なレベルに進化した。
「どうしてくれんの?」
「いや、その、…………すまんかった」
「謝罪で済んだらポリスメン要らねぇんだよッッ!」
家に様子を見に来たマコトにがなりたてる私だけど、まぁそれらを込みで請け負ったんだからぶっちゃけマコトは怒られる筋合いなんて無いんだよね。
でも欠乏症と依存症が深刻で、怒鳴らずには居られないんだ。
ログアウト中、家にいる間は基本的にヒイロとライカを抱き締めてないと手が震える様になって来た。
「ふっ、笑えよ。これがケモナーの末路さ」
「いや全国の健全なケモナーさん達に謝れよ。お前をケモナーのスタンダードみたいに言うなや」
「馬鹿野郎マコトお前このやろう、ケモナーが健全な訳ねぇだろ。そんなん言うなら私の目の前に『健全なケモナー』とか言う屏風の虎を連れて来いや。そんな『ヘルシーなデリバリーピザ』みたいな存在居る訳ねぇだろ」
「いやそこまでじゃ無くね? ケモナーってそこまで救えない存在じゃ無いだろ」
「ああんっ!? ケモノにガチ恋する様な異常者が健全な訳ねぇだろッッ! そんなんケモナー自身が一番よく分かってんだよ!」
「いや待て待て待て。なんで俺これ、ケモナー相手にケモナー擁護しなきゃいけねぇんだよ馬鹿かよ」
全く分かってねぇなこの物理エルフ(ドワーフの姿)がよぉ。
ケモナーってのはな、人間が欲情して良いケモノが地球に居ないって時点で絶望してる異常者だぞ!
私がヒイロに擬人化しないでってお願いしてるの何でか分からんのかコイツはよぉ。ヒイロがシコ過ぎて理性がぶっ壊れそうだから控えて貰ってんだろうがよぉ。
健全なケモナー? 連れて来てみろや! 居ないからそんな奴!
恋愛対象がケモノって時点で健全とは真逆に居るだろうが!
一歩引いて「いえ私は愛でてるだけで幸せです」ってツラしてるケモナーだってなぁ、性癖ぶっ刺さりのどちゃシコいケモノを目の前に置かれたら野獣になるからな! 絶対だぞ!
「全くよぉ。健全なエルフスキーなんて居ないって分かってんだから、ケモナーだって似たような物だと分かるだろうがよぉ」
「いや待て待て待ちやがれ下さいコノヤロウ。しれっとエルフスキーにどデカい風評被害乗せてくんじゃねぇよ。戦争がお望みかコイツ」
「あ? なんだ? また秘蔵のエロゲでも暴露されたいのか? エルフ耳から触手が侵入して脳みそレ○プとか楽しんでる奴が健全な訳ねぇよなぁッ!?」
「だから何でお前が知ってるのッ!? あれはまだ開封すらして無いのにッ!?」
「お前本気で家族にセクシャルアイテムの存在を隠し切れると思ってんのかよ! お目出度い頭してんなぁ!?」
だから結ちゃん攻略の前に母親攻略しないと意味が無いんだって気付けよ馬鹿め。
「あぁヒイロ、ライカ。こんな馬鹿はほっといてイチャイチャしよーねー?」
抱き締めた二人をもきゅもきゅしながら癒される。
はぁ、やっぱケモノっしょ。癒し性能がダンチよ。アニマルテラピーはガンにも効くようになる。今はまだ効かないけどその内効くようになる。間違い無い。
「はぁ、まぁいいや。で? 調子はどうよ?」
「あん? 見て分かんだろ。最悪だよ」
「ちげーよ。アナグラの成績だよ」
「ンなもん相手によるだろ。強い人と当たれば苦戦するし、弱い人と当たれば楽出来る。ネトゲってそう言うもでしょ?」
「まぁそうなんだけどさ」
て言うかコイツ、自分の練習は良いのか?
いやまぁ、GGSTでプレイするのがナンバリングタイトルとは言え別ゲーである。練習したところでどこまで有効か分からない。
でも、この手のゲームは少しプレイしないだけでエイムの精度に影響が出るとも聞く。
私みたいなナイファーならまだしも、マコトは普通に銃で戦うんだろうし、こんな所で油売ってて良いのか?
「顔見りゃ言いたいことは分かる。が、まぁ大丈夫だ。て言うか自分で練習するよりお前のプレイ見てた方が練習になるし」
「は? 覗きか? 通報したろ」
「アーカイブまじ助かる」
そういや、観戦する為のコードみたいの渡してたな。あれで試合の様子見れるのか。へぇ、教えとけやクソが。
「て言うかマジで当日まで顔合わせしない気? 随分な対応だな」
「それについてはマジですまん。相方の性格がさぁ…………」
「私これ、本気で降りても良いんだぞ? ソイツだって私が居ないとイベント参加出来ないんだろ? つまり私って恩人だろ? なのにこの対応ってどう言う了見なの?」
「返す言葉もねぇ…………」
いやさ、ソイツに対する文句をマコトに言ったって仕方ないのは分かるよ?
でもさ、限度ってあると思うんだよね。
「GGSTの日、チョコさんが別のイベントでライブやるんだってさ。私そっち行っていい?」
「止めて止めて、マジで謝るから」
「はぁ〜、チョコさんのライブ我慢してまで手伝ってやってるのに、この対応だもんなぁ〜……。そのクソ野郎の頭、試合中にブチ抜いてやろうかなぁ」
「あ、それは別にいいゾ。俺とお前が残ってれば勝てると思うし」
え、まーじ? そんな事言うとマジで殺るぞ?
私がアナグラのエキシビションに参加するの、マコトがエルオンでケモ合コン開いてくれるからだし。つまるところ、私が恩を売るべき相手はマコト一人なのだ。
だからそのクソ野郎からどれだけヘイトを稼いだとて、私には何の痛痒も無い。
なんなら、チームの勝ちを私が決定付けるなら、マコトさえ捨て駒にしたって許される。マコトも限定アイテムが欲しいだけだし。
「いっそ、当日の試合は私だけ別行動する? パラシュートダイブする時に私だけ二人と違う降下ポイントに落ちる感じで」
「え、それなら俺もそっちが良いんだが…………」
「なんでバトロワの最中までお前と一緒に居なきゃなんねぇんだよ。デートならヒイナとしてろボケ」
「そりゃヒイナちゃんがエルフに転生してくれたら俺から土下座して頼むけど」
「殺すぞテメェ」
全く。あんなに可愛いヒイナの何が不満なんだ。贅沢な奴め。
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