第82話 逆鱗。
精神的な疲れからぐったりする私に、目の前の煽り厨? は宣言する、
「ふん! 取り敢えずアンタ、今日限りで、兎姫を名乗るの止めなさい! 兎姫は元々私が名乗ってたんだから!」
「えっ? あー、うん。別にいいよ?」
やっと本題に入ってくれた。茶番が終わって安心した。
そうか、なるほど。確かに見た目が兎姫って感じのキャラクターだもんね。元々自分が名乗ってた異名なのに、似たような格好で似たようなキャラクリの女(幼女)が、イベントで目立って自分の異名を名乗ったら、まぁ良い気はしないだろう。
普通にクソ失礼な態度だったけど、事情を考えれば納得出来る。失礼だったけど(これ大事)。
私はヒイロとライカが居るこの世界を、たかがゲームだなんて言葉で片付けれない。私にとってのエルオンは現実と等価だ。
だから、この兎姫って二文字がこの世界における彼女の大事なアイデンティティだと言うなら、それは相手に失礼ブチかますだけの理由足り得る。私はそう思うし、納得出来てしまった。
例えるなら、ヒイロとライカが新しくゲームを始めた新人のペットとして奪われてしまったような感じだろう。それも突然、なんの前触れもなく。
そんなことになったら、私はなんの比喩でもなく狂う。相手に突撃するし何をしてでも二人を取り返すし、必要なら相手の現実の住所を調べて法に触れる方法だって検討する。
そう思えば、この世界で彼女を指し示していた大事な異名を取り返す為に相手プレイヤーに凸るなんて、私にとっては納得しかない。当然の行動であるとさえ言える。
「それじゃぁ、えーと、兎姫さん? の要件はこれで終わり?」
「兎姫って呼ばないで! アンタなんかにこの名前を呼ばれたくないわ!」
「あ、はい。ごめんなさい? いや私はあなたの名前知らないんだけど?」
相変わらずクソ失礼だけど、まぁ大事な名前だったんなら、それを奪ってた相手から呼ばれたくもないのは分かる。奪ったのは私じゃなくて運営だけど、相手にしたら関係ない話しだしなぁ。
「ふんっ! この兎姫ラビラビ様を知らないなんて、やっぱり初心者ね!」
「はぁ、ラビラビさんですか。名前も兎なのか、気合入ってるなぁ」
あと、どうでも良いけど、この人「ふん!」って鼻息出さないと喋り出せない病気か何かなの? もしそうなら同情するんだけど…………。
「ふん! まぁいいわ。要件の一つはそれで終わりよ。もう二度と名乗らないでよね!」
「はぁ、まぁ、別に自分から言い出した物じゃ無いですし? あとの文句は運営へどうぞ?」
「もう言ったわよ!」
「ああ、言ったんだ」
そりゃそうか。私もバグで他のプレイヤーへヒイロとライカが持ってかれたら、むしろバグ報告メール出すどころか直接乗り込むわ。今すぐ返さないと殺すぞって代表探し出して刃物を突き付けるわ。
「…………ん? 要件の、一つ?」
「ふん! そうよ! もう一つあるのよ!」
「そうなんだ。……それじゃぁ、ラビラビさんのご要件二つ目ぇ、どうぞぉ〜(バラエティ番組のMC風)」
もう一周まわって楽しくなって来た私は、両手を彼女に向かってヒラヒラさせながら合いの手? を入れてみた。
「ふんっ! 少しは弁えてきたようね! それじゃぁそのまま、兎姫である私に相応しいその、桃色の兎も私に寄越しなs--」
-カウンターバースト起動。
-自刃発動。
-不屈発動。
-クリティカルエッジ起動。
-クイックリッパー起動。
-ロングピアース起動。
-フルカウンター起動。
-ペインバースト起動。
-クレイジーハート起動。
-クレセントヴォーパル起動。
-クレセントヴォーパルソード起動。
「--えっキャァァァァアアアアアッッッ!?」
私はその言葉を聞き終わる前に短剣斧にカウンターバーストを乗せて自分の心臓を突き刺し、HPをほぼ全部削ってから即座に全スキル乗せのクレセントヴォーパルで目の前のクソ女を蹴り殺そうとした。
しかし、さすがは騎士。むしろその為に控えていたであろう事を考えれば当然の行動か。
騎士の一人がクソ女を突き飛ばして私の射線から外し、そして前に見たギガフォートレスを無言で起動。私からのダメージを全部消し飛ばす。
「殺れライカ」
「がってん。……ガルァァァアッッ!」
「イギッ--」
「ピ--」
しかしコチラにはライカが居る。私の端的な指示を受けたライカは正確に私の想いを受け取り、一瞬で獣型へと変身してスキルを放つ。
それは雷華繚乱が進化した新しいマクロスキル紅蓮雷華。
発動して一瞬、進化して変わった赤い雷光が閃いて、目の前にいたタンク職を二人とも消し飛ばす。
紅蓮雷華。ライカの持つビーストハート以外のアクティブスキルを全部乗せした殺意の権化。
ワイルドハント・オーバードライブでステータスが倍になり、さらにエネミースローターでSTR・INT・AGI・DEXを更に倍加、スキルによるステータス増幅はこの場合乗算なので、その四つは六千にまで増える。
そのステータスからキングサーキュラーでSTR・AGI・DEXの合計値の五倍である五万四千が五秒間、全部の攻撃に乗って無条件クリティカル発生。
その莫大な攻撃性能にワールドブレイカーの防御スキル無効でギガフォートレスを潰し、ホーリーブレイブで最終ダメージ倍増と防御貫通にスーパーアーマーまで付与して、そしてワイルドハント・オーバードライブによって瞬間フルチャージしてホーリーブレイブの防御貫通まで乗ったティアラボルトが、INT六千ダメージ六十回の追撃を一撃に込め、しかもそのティアラボルトも五秒間全部の攻撃に乗ってその追撃が発生する。
しかもティアラボルトは連続追撃効果なのに、ダメージ自体は本当に一瞬終わる。さらに一番最初に処理される。つまり余程カス耐久じゃなければ不屈は発動しない。
ワイルドハント・オーバードライブのデメリットで効果終了時、スキルで与えたダメージ分がライカにフィードバックされる。が、それは愛の傷で私が肩代わり出来て、それも不屈の無敵中にヒイロが回復してくれたHPで受け切れる。カウンターリソースの再チャージ美味しいぜ。
しかし、まだ仕事が残ってる。
「………………おい」
護衛が一瞬で消し飛んで呆然とするアホ女に、この世の地獄を見せてやらねばならないのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます