第47話 富国強兵

「そういえば進次先輩。核融合炉に必要不可欠だった高性能のコンピュータってどうやって作ったんですか? 皆目見当もつかないって仰ってましたけど……」

「ああ、それなんだけどな。スマホを【SF】で再現して、それを大量に繋げるイメージで作ったらなんかできたんだよな」

「けっこー大雑把なんだね」


 そう言って興味深そうにするのは金髪欧風美少女のアイシャだ。訓練から帰ってきたら核融合炉が完成していたことに最初は驚いていたが、割とすぐに順応した彼女である。外国から転校してきてすぐに桜山高校に馴染んだアイシャらしいな。順応性が非常に高い。

 まあ実際のところは、核融合炉の何が凄いのか理解していないからこそのこの軽い受け答えっぷりなんだろうが……。


 ちなみに核融合炉を見たリガニア人達の反応だが――――


「これ一基でこの都市の電力がすべて賄えるのか!? なんと恐ろしい技術だ!」

「ワシもだいぶ長生きしているが、人工の太陽を作るなど考えたこともなかった。沖田殿はやはり類稀なる御方なのだな」

「この『こんぴゅーた』というもので複雑な計算をして、人の手で小さな太陽を制御するのですね。かくゆうごう? とはまさに夢のような技術だと思います。流石は進次さんです」


 ――――とのことだった。ちなみに前から順にリオン、モーリス、セリアのセリフだ。やはりセリアの理解力がダントツで輝いている。若いというのもあるだろうが、彼女の頭の回転は素晴らしいな。


 と、まあそんなこんなでコンピュータと核融合炉という夢の二大SF技術を苦難の末に開発した俺は、その反動と言わんばかりに今度は水を得た魚の如く都市の改修に精を出していた。


 まず、約束通り柚希乃の希望していた都市防衛用巨大レールカノンは、いの一番に開発・配備した。設置した場所は叶森台地の中でも最も標高の高い丘だ。この巨大レール砲専用に新たに核融合炉を作ってあるので、これを撃ったからといって都市が停電することは絶対にない。電源を複数用意しておくのはリスクヘッジとしては当然の措置だな。


 次に、戦闘車輌のレール砲への換装だ。これは新たに開発した「全固体電池」という、リチウムイオン電池を遥かに上回る高性能・高出力でかつ高い安全性を持った新型のバッテリーとセットで交換してある。

 もちろん柚希乃の携行型対物レールガンの改修も忘れない。万が一、柚希乃に怪我でもあったら困るからな。改良した対物レールガンを手渡したら、柚希乃はとても良い笑顔で喜んでいた。可愛い。


 さらに大きな変化がまだある。コンピュータを開発したことによってインターネットの敷設が可能になったため、俺は無線の技術を応用して電波塔や基地局を建設、沖田平野一帯にインターネット接続環境を整備したのだ。流石に地球とネットワークを接続することまではできないが、それもいずれできるようになったらいいと思っている。

 話を戻すと、スマホやパソコンを量産できるようになったので、今ではリガニア人も含めて全員が携帯通信端末を持っているほどだ。これを作ったところ、特に防衛軍の人達から異様に感謝された。

 なんでも「これがあれば作戦の幅がとても広がる!」とのことである。まあ情報インフラの大切さは現代日本に生きていた俺達日本人が誰よりも詳しく知っていることだ。彼らには早くこの見慣れない電子機器を使い熟せるようになってもらいたい。


 それとユビキタス社会到来に関連してもう一つ、俺は偵察・観測用の人工衛星も打ち上げていた。インターネットをやるなら、やはり衛星測量システムGPSが使えたほうが何かと便利に決まっているからだ。

 GPSがあれば無人機の操作ももっとやりやすくなるし、誰か遭難者が出た時にも救助できる可能性がぐんと上がる。長距離レーダーや都市防衛用巨大レール砲なんかと組み合わせて運用すれば、遥か遠くの敵にだって軽々対処できることだろう。


 ちなみに人工衛星を打ち上げたということは宇宙ロケットの技術も獲得したということで、即ちミサイルの開発にも成功していた俺である。ドローンの時に培った航続距離の延伸技術とGPSによる遠隔誘導技術を掛け合わせたおかげで、実に射程数千キロ以上という中距離弾道ミサイルならびに巡航ミサイルを既に実戦配備済みだ。

 いつの間にかルシオン王国を一方的に攻撃できる手段を獲得していた我ら沖田一味だが、当のルシオン王国陣はそんなことなど知る由もない。ちゃっかりミサイルの目標ターゲットがルシオン王国の王城にロックオンされていたりするのは他の皆には内緒である。唯一、この事実を知っている柚希乃が黒い笑みを浮かべていたことに関しては、誰にも言わないでおこうと決めた俺であった。






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