第12話 八重の話(1)

「八重(やえ)さん、つきあい悪いのね」

同級生が私の態度を気にくわないと指摘するのは何回もある

「ごめんさない、人付き合いが苦手で」

クラスの人間とはなるべく、距離を置いている。


祖母の家は、四国の山奥にある。

犬神憑きの血筋で、長女が家督を代々受け継ぐ。

きちんと継承できれば、家は栄える

長女は短命な場合が多い

寿命は短く50代前には亡くなる。


今の祖母は犬神を母親に憑依させたため、まだ存命だ。

母は私を産むと長く生きられずに、亡くなった。

犬神は幼い私に取り憑く事で、継承されている


死ぬ間際の母親は、土気色の顔に息をするのも

苦しそうに見えた。


私は家の人間に、大事な役目であることを何回も聞かされている

金はあるため贅沢もできる

欲しい物は何でも貰える


わがままに育つと思う人も居るだろうが

実際は、自由に生きられない囚人と同じ状況だ。

もし私が反抗をすれば、犬神は私を許さないだろう。

死刑囚と何も変わらない。


祖母達は成人になる前に私を結婚をさせて

子供を作らせる準備をしている。

それが役目のために生きている

クラスの同級生と同じように、楽しめる青春は無い。


「八重さん、おはよう」

同級生の祥生(しょうせい)君は、私に挨拶をしてくれる

私はただ、会釈をする。

仲良くは出来ない。


「あんたさぁ、祥生が挨拶をしたのに、なんもないわけ?」

彼が好きなのだろうか、グループで活動をしている同級生が、

私を囲んだ。

廊下まで連れて行かれると壁に押しつけられる。

私は焦る

「ごめんなさい、声が出なくて」

私は体が大きいせいで目立つのか余計に絡まれる。


私を睨んだ同級生は、私の髪の毛を掴むと下に引っ張る。

彼女は悲鳴を上げた。

手から血がこぼれ落ちて廊下に溜まる。

手のひらが切り傷で一杯だ。

大けがをしていた。


それからは、私の机の周囲の人間は具合が悪くなる。

誰も近寄らない

しかし、彼だけは違っていた。

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