第2話

 いやもう大変よ!

 その場に居た人々大騒ぎ。

 特にうちのお父様大変。


「一体ここまで決めておいて、君はうちの娘との結婚の何が不満なんだ!」


ってね。

 レーダーマン氏ももう顔を真っ赤にしてこう怒鳴ったわ。


「そうだリチャード、これはお前とスーザン嬢だけでなく、家と家との問題でもあるんだぞ」

「どう言われてもすみませんとしか僕には言い様がありません…… どうしてもこの結婚には、不幸な未来しか僕の目には見えないんです……」


 もう親戚総出で彼の説得に乗り出したわ。

 だってそうよ。

 もう式の支度もあらかたしていたし、招待状も出したし。

 だいたい、ここで取りやめになったら、私は結婚を断られた娘ということで相当社交界で噂になること必至。

 それを彼は判ってたのかしら?

 それこそ、私自身が嫌になったのなら、結婚してから愛人でも作ればいいじゃない。

 一度ここまで決まった結婚を、何がどうしてこの時点で、よ。

 もっと早く、誰の口にも上がらない時点ならともかく!

 だから破談にするかどうかの前に、ひたすら皆で彼を問い詰めた訳。

 本当の理由は何処にあるんだ、そんなふんわりした理由じゃ結婚を止めることなんかできない、と。

 そしたらリチャードはとうとう白状したわ。


「実は占いが」


 そこで顔色を変えたのが、レーダーマン氏ね。


「お前…… まさかアンナやリンダのところに今も行ってるのか……?」


 アンナというのは彼のお母様です。

 ただリンダというのはこの時点では知りませんでした。


「妹です。ただし、腹違いの。あれも一応自分の血がつながった娘だし、母親はもう死んで行き先が無いので、本人の申し出でアンナの世話をしてもらっています」


 成る程このお宅の少し表に出したくなない部分だったのでしょうね。


「実はうちで私がアンナと別居する結果になったのは、あれが占いにはまったからなんです」


 レーダーマン氏は言いました。

 家の中の自分の部屋の配置、家具の置き場所、パーティの参加不参加、そういったことにいちいち「今日は行っては駄目、日が悪い」とか「この方向に置いたら良く無い」「出張は駄目、事故が起きる」

とか……

 さすがにそういうことが続くので、外に愛人を作ってできたのがリンダだそうななんですが。


「そのリンダの占いがよく当たるというので、僕の結婚について見てもらったんですが」


 そこで何故彼がどんどん私の言うことに反対していったのか判りました。

 動物を飼うのも、衣装のことも、全て彼女の入れ知恵だったそうです。


「だけどリンダの占いは本当によく当たるんだ。実際、別荘のある村では、周囲の村人達にも感謝されているって言うし」


 そう言って聞かない彼に、レーダーマン氏も父も、これはもうリンダを連れてきて詳細を聞くしかない、と思いました。

 そして私は私で、少々占いについての本を漁りました。

 そしてあれこれ調べるうちに、向こうのお母様のそれは、どうも東洋風の流行の関係で聞きかじった占い師のせいの様でした。

 私はその方面に関して、もう少し突っ込んだ書籍もあれこれ探しました。

 すると、なかなか面白いことが書いてあることに気付きました。

 占いというものがあるならば。

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