第31話 準々決勝開催です

『それではこれより、学園トーナメント準々決勝第二試合を始めます』


 次の日の午前一〇時。


 街中の人が集まる大歓声と、立体映像による紙吹雪やライトでアリーナはお祭り同然の盛り上がりを見せる。


 前の試合が終わって熱しきった会場では、これから叶恵VS二年一〇組代表の試合が始まる。


 俺と叶恵はすでに、選手入場口廊下で準備済みだ。


「それにしても、ただの学内試合なのにこの客の数。流石は世界人気ナンバーワンスポーツMMBだな」


「そりゃ今日でこの学園の代表選手、つまりこの地区の代表者が決まるんだもん、当然でじゃない」


 アメリカではアメフトが地区大会程度でも会場が満員御礼状態と聞くが、それ以上だ。


「よし叶恵、昨日も言ったけど、今日の相手は剣道部のエースだ。甲冑の戦闘スタイルも長刀タイプの高周波ブレードがメイン。おまけに用心深いから、相対突きはたぶんキマらない。無理に狙うな、近接戦闘ならこの二週間で身に付けたアレで勝負が付く」


「わかったわ! ようし、行くわよー」


 叶恵は俺に背を向けると、甲冑の足が床からふわりと離れる。

 入場口へと浮遊移動する背を見て、俺はこの二週間を思い出す。


   ◆


「おい叶恵、お前本気でレッドフォレスト杯目指しているんだよな?」

「当たり前でしょ、今はまだ言えないけど、あたしは何がなんでも今年のレッドフォレスト杯に出ないといけないの!」


「でも今のお前はCプラスからBマイナスになった程度だ。B級選手のお前が間違いなくA級選手のアメリアに勝ったのは、相手の油断に漬け込んだ奇策のおかげだ。そんなお前が本気で関東大会を優勝してレッドフォレストに出るっていうなら、ゴールデンウィークは全部特訓にまわす必要がある」


「当然でしょ! 今更何言ってるのよ朝更。言っとくけど、学園トーナメントまで休ませてなんてあげないんだから。コーチを引き受けた以上、絶対にレッドフォレストに連れて行ってもらうわよ!」


 強い意思のこもった凛とした声、太陽のように燃える瞳だった。

 そう言われて俺は、まるで毒気を抜かれたように笑った。


「そうかそうか、うん、わかったよ叶恵」


 彼女の頭に手を乗せると、叶恵はまた慌てて振り払おうとするがそんな事は許さない。


「一緒に行こうな、レッドフォレスト」


「あ……当たり前よ馬鹿!」

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