第28話 エロゲ主人公!

 俺は叶恵がお風呂に入っている間に、部屋のソファに座ってまた戦友の晶と電話で話していた。


 膝の上では、愛柴犬のサクラが俺にお腹をみせて体をくねくねさせて甘えている。


「そうか、じゃあそっちの戦況に変化は無しか」

『ああ、日本軍はアメリカやフランス、イタリアやドイツ軍と協力して連戦連勝さ。やっぱり背中を気にせず戦えるのは心強いよ』


「……俺が抜けた穴はどうしてる?」

『みくびってもらっちゃ困るよ朝更。確かに君は強かった、最強だった。比喩表現抜きの万軍殺しは流石の一言さ。でも僕らだって無力じゃない。朝更がいない分、君がいなくてもやっていける事を証明しようとみんな躍起になっているよ。士気も高いし問題はないよ』


「そうか……ならいいんだけど」

『それより朝更、そっちは何か変わった事はないのかい?』


「そうだなぁ、あー、俺女子寮に引っ越した」

『えええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?』


「そんなに驚くなよ。それと凄いぞ叶恵のやつ。学園トーナメント準々決勝進出決定だ。初戦は一撃で瞬殺。二回戦は時間こそかかったけどほぼ無傷だし、こりゃ行けるぞ」

『…………』


「おいどうしたんだよ晶。なんとか言えよ」

『入ってきません!』


「はい?」

『朝更が女子寮に住んでいるってビッグニュースのせいで何も頭に入ってこないよ! なんなの!? ねぇなんなのそれ!? それはどういうあれなの!? 女子寮に住んでいるってどこのハーレム漫画なの!? なにがどうしてこうなった!?』


 SOUND ONLY なので顔は解らないが、晶の表情は声だけでも想像できた。


「あ、やっぱり世間的にアウトか?」

『そんなの決まって、ああそうだよね! 朝更って自分んちと向こう三軒両隣の家全部女の親戚しか住んでないもんね! 朝更のエッチ、変態! ハーレム王になって警察に捕まればいいんだ! もう二度とこっちに帰って来ちゃ駄目なんだからね!』


 ブツッ。


 っと一方的に通話を切られた。


 なんだろう、何がそこまで晶の琴線に触れたんだろう?


 まぁ明日には機嫌も治っているだろう。


「サクラいいこいいこ」


 俺は左手でサクラのお腹をなでまわしながら、右手でアゴの下をくすぐった。

 大喜びで息を荒げるサクラを見て、俺はその両頬をつまんでひっぱる。


「おー、のびるのびる。むにー、むにー」

「わふわふ」


 サクラは嬉しそうに鳴きながら俺にされるがままだった。


「あーそうだ、ビデオレター撮って部隊のみんなに一斉送信するか」



 俺はLLGの投影画面から録画モードをタッチした。


「あまり長くてもアレだし、一〇分に設定するか」


 投影画面をLLGから切り離してその空間に固定。

 五秒後に録画開始に設定して、俺はサクラの頬を伸ばしながら待った。

 画面下のカウンターが動き始める。


「みんな久しぶり、こいつは前話した柴犬のエイドリアーンだ。今はサクラって名前にした。今俺は国防学園付属専門学校でMMBのコーチをしているんだ。それで今学園トーナ」


 俺の耳が物音を捉えると、サクラの耳もぴこん、と動いた。

 背後で脱衣所のドアが開く音がして、俺はサクラを抱きかかえてソファから立った。


「おう、上がったか?」


 俺はサクラとお風呂に入ろうと脱衣所のほうへ歩き、バスタオル姿の叶恵が廊下から姿を現した。


「朝更!?」


 バスタオルのすきまから胸の谷間を覗かせる叶恵が耳から蒸気を噴き出した。


「いやぁん! 忘れてたぁ!」

「お前、いつまで一人暮らし気分なんだよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る