第5話 転校生はアメリカ美少女
投影画面の中で、両手両足を機械装甲で覆い、背中から機械の翼を生やした女性達が剣や銃を手に勇ましく戦う動画が流れる。
『今もっとも熱い世界最強最高のエクストリームスポーツ! ミリタリーメイルバトル! 通称MMB! 今日も戦乙女達は美と強さを競い戦う。君も今すぐ参戦だぁ!』
ナレーションが終わると、プロ選手であろう女性が映り綺麗にウィンク。
『君もなれる』
俺はLLGの投影画面を閉じた。
「俺の時も相当だったけど、俺がいない二年間で拍車がかかってるな」
「五年前から軍事甲冑の操縦が得意だからって理由で、男子プレイヤーは全員徴兵されちゃったもん。男子MMBファンも女子の観戦に流れて、戦争経済や世論の後押しで今じゃプロ選手は女の子なりたい職業ランキング一位よ。知らなかったの?」
「テレビ見ている暇あったら仲間と模擬戦してたからな。みんなが盛り上がっているのは知ってるけど、まさかここまでとは」
午後、生徒達がパイロットスーツ姿でグラウンドに集合。俺と藤林は、水越先生が来るまでの間、こうして動画を見ているというわけだ。
その時、俺らの視界に、金髪縦ロールと揺れる爆乳が飛びこんだ。
「MMBは今やワタシの祖国アメリカ合衆国でも、アメフトを抜いて人気ナンバーワンスポーツデスネ! 日本と同じく男子プレイヤーは戦場で、女子プレイヤーは国内アリーナで戦い、国民の士気を上げているのデッス!」
大きな胸を突き出し、鼻息を荒くして語るアメリア。
俺は彼女の大きくて豊かな胸から視線を逸らして、今度は白いふとももにドキっとしてしまう。
女子プレイヤーのスーツは、水着やレオタード以上に体のラインにフィットしている。
厚めのボディペインティングではないかと思ってしまうような衣装も、そこから伸びる手足も、先週まで男だらけの戦場にいた俺には刺激が強過ぎる。
「はいはーい。じゃあ皆さん整列してくださいねー」
担任の水越真美先生がパイロットスーツ姿で登場。
アメリア並のスタイルに、俺は息を吞んでしまう。
軍から支給された俺の軍用スーツは、つま先から首まで完全に覆い、防弾防刃性の素材は体の線をあまり強調しない。
今ははずしているが、本当は胸やヒジ、ヒザに防御用プロテクターがついている実戦的なデザインだ。
頭部を守るヘッドギアも外してしまおうか、と考えている間に女子が整列。
水越先生が俺のすぐ横でみんなを眺め笑顔を作る。
俺もみんなを眺めて、すっごく恥ずかしくなってくる。
水着と同じかそれ以上に刺激的な格好の女子数十人が、俺の前に並びみつめてくる。
なんていうか……照れる。
「はい、じゃあ皆さん準備ができたようなのでこれから訓練を始めます。でもその前に三日後のクラス代表選抜ですが、立候補する人は前に出てきてください。1人しかいないなら自動的にその人が一年二組の代表になります」
藤林を含めて、四人の女子が前に出る。
こいつらを倒して藤林を代表にするのが俺の仕事か……
「AHA~HA。そんなの戦うまでもないデスヨ!」
列からオーバーボイス&アクションで進み出たのは当然アメリア・ハワードだ。
他の生徒は『何よあんた』とばかりに不機嫌な顔をする。
「何を言っているデスカ! 去年のニューヨーク州チャンピオンであり、アメリカ有数の軍需企業、ハワードカンパニー三女であるこのアメリア・ハワードにと張り合うなんてヘソでステーキが焼けマスネ♪」
途端にみんなの顔が青ざめる。
「ニュ、ニューヨーク州チャンピオン……」
「ハワードカンパニー三女……」
「そんなの反則じゃん……」
まぁみんなの反応も当然だな。
俺が納得すると、藤林がこっそり俺の小指を引っ張る。
「ねぇ桐生。ハワードカンパニーってそんなに凄いの?」
小声の問いに、俺は頷いた。
「ハワードカンパニー。アメリカの軍需産業において毎年一位争いをしている世界有数の大企業だ。当然、現在では全ての兵士の基本装備である軍事甲冑、アメリカで言うところのミリタリーメイル製造においてもトップレベルの会社だ」
「そ、そんなのがバックについていたらあいつの機体」
「予算を気にせず改造カスタムし放題。スター選手並のパトロンがついているようなもんだ。そりゃ高校MMBじゃ反則みたいなもんだろ」
得意げに胸を張り、精神的にみんなを見下ろすアメリア。
対する立候補者三人は恥をかくだけと判断したのだろう。
一歩二歩と後ずさり、列に戻ってしまう。でも……
「あたしはやるわよ!」
ただ一人、藤林だけが凛とした眼差しでアメリアと対峙した。
「フフン。ハンパイが相手デスカ。いいでしょう。ワタシが完膚抹殺してあげマス!」
多分この子、乾布摩擦を『完膚無きまでに抹殺する』だと思ってるんだろうなぁ。
「それはこっちの台詞よ!」
藤林が一歩進み、至近距離でアメリアを睨む。
身長は対して変わらない二人だが、アメリアの爆乳と、藤林のハンパイが潰し合う。
自分の胸を見て、勝ち誇った顔になるアメリア。
藤林は赤面して体を離し、自身の胸を抱き隠す。
「む~、桐生! 放課後は猛特訓するわよ!」
「任せろ」
「?」
アメリアは俺と藤林の顔を交互に見比べる。それから唇に指を当てて笑う。
「ナルホドデスネ♪」
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