第11話 次の犠牲者たち

 あのゴタゴタした事件から四日後、俺は会社で仕事に明け暮れていた。

 あれから百鬼の壺の件では、ナマからも泰蔵さんからも、新しい進展があったとは聴いていない。俺はその間、この街で起きた事件に神経を尖らせていた。

 何故この街だけなのか?

 それは、殺害された志摩の行動範囲だ。ナマのおばさんが最後に壺を見たのが、午後の七時。そして盗まれたと気づいたのが午前四時頃。そして朝になって、志摩は河原で死体となって発見された。

 そしてそれを殺ったのが、赤桜会の紅林雷(らい)。初めは否定していたものの、彼が乗っていたバンから次々と志摩の痕跡が発見されたうえに右手コブシの怪我も相まって、徐々に犯行を認めるような発言を始めていると言う。

 俺に情報を流してくれる刑事によると、待ち合わせは午後十一時で、場所は志摩のアパートだった。志摩は、盗んだはずの壺を持たずに自転車で現れたらしい。

 志摩は、当初の予定だった二百万から大幅アップの五千万を要求し、それを拒否した紅林が、隠した壺の在処を穿くまで暴行したが、結果として志摩は口を割ることなく死亡。

 その時刻が二時過ぎ。紅林は念のためと、組の車(バン)を用意していて、志摩の遺体を車に乗せ河原に捨てた。

 つまり志摩は、午後の七時以降に壺を盗み、午後の十一時に自宅のアパートに帰って来るまでに壺を隠した。ちなみに志摩は車の免許を持っておらず、当然所持もしていない。

 だとすると、壺がこの街に隠されている可能性が極めて高い。また、志摩の親兄弟や親戚は県外のため、取り敢えずそこに預ける。と言うことも不可能だ。

 その他の方法として、配達も考えられなくはないが、それらしい記録はないらしい。

 となると、百鬼の壺はどう考えても、この街にある。それが俺の出した結論だ。

「白神。これがお前の探していた事件か?」

 編集長に呼ばれ、ある記事を渡された。それにはこうある。


《いじめの復讐を遂げ、後追い自殺か? 

 昨夜、市内にある北高の校舎内で、五人の男女が遺体となって発見された。

 発見されたのは同校の生徒で、その中の一人の遺体から、『いじめを受けた復讐』と表された遺書が発見されたと言う》


「編集長。ちょっと行ってきます」

 ニヤリと頷いた編集長は、

「おう、行って来い」

 と後押ししてくれる。こういう時、記者と言う仕事と、理解のある上司に恵まれて良かったと心底思う。

その分、良い記事を書かないと、何をされるか(蹴り位なら普通にある)わかったもんじゃないけどな。そういう意味では、泰蔵さんよりたちが悪いと言えるが……さて、どうしたものか?

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