第25話 ウンピョウ、ヒクイドリ、オカピ、オリックスより強い主人公
「どぉおおおおおおらあああああああああああああ!」
俺の一撃が、ネコ科猛獣ウンピョウのどてっ腹をブチ抜いた。
狩猟祭がはじまってしばらく、俺は集落から離れた平原で狩りをしていた。
狩りのメンバーは、俺といつもの六人、それいアオイだ。
仲間の六人は、荷車を引いて俺についてくる。
荷車とは、昔おじさんが考え、長老が形にした輸送道具だ。木の板の下に車輪、ていう丸く平べったい板を取り付けて、重たいものでも楽々運べる。
荷車には、俺や仲間が仕留めた動物が乗っている。
俺が仕留めたのは、ヒクイドリ、オカピ、オリックス、それにいま仕留めたウンピョウだ。
ヒクイドリはダチョウよりも小型だけど、足には鋭い爪がついていて、かなり危険な鳥だった。
オカピは角のないシカを少し太らせたような動物だ。体は茶色けど、なぜか四本の足だけが縞模様なのがおもしろい。後ろ脚から繰り出す蹴りは強力だった。
それからオリックスは凄かった。
槍のように長い角が二本、後ろに伸びていて、背後や上からの攻撃はすべて防がれてしまった。
でも体重は俺の五倍はありそうで、正面から戦うのは本当にキツかった。
そして、俺はたったいま手にした最高の獲物の首根っこをつかみあげる。
「おいお前ら! ウンピョウ獲ったぜウンピョウ!」
『よっしゃあああああああああああ!』
「アギトすごーい♪」
ウンピョウはネコ科の猛獣で、ボブキャットよりも大きなサーバルキャットよりもさらに大きい。
戦闘力も、大きさに比例してサーバルキャット以上だった。
それでも、それでもだ。
いまの俺は、ヒョウという例外を除けば平原最強、人間が狩れる範囲ではもっとも仕留めるが難しい猛獣である、ウンピョウを一方的に仕留めた。
これだけで、俺の優勝は決まったようなものだ。
「結構獲ったな、どこかで休憩するか?」
俺の問いに、仲間たちは頷いた。
俺はウンピョウを荷車に乗せると、近くの湖を目指した。
◆
湖に到着すると、他に水を飲みに来ている動物はいないようだった。
背の高い草に囲まれた湖は静かで、秋の涼しい風が、気持ちよく俺の頬をなでていく。
俺らは湖の水を吞むと、軽く水浴びをした。
それから、荷車に積んであるヒクイドリを食べることにした。
ヒクイドリは俺が仕留めた獲物だ。
でも俺は、ウンピョウを仕留めている。
ならヒクイドリぐらいあってもなくても変わらないだろう。
俺らはヒクイドリを解体して、腐り易い内臓を先に食べることにする。
仲間の二人が火を起こしている間に、俺ら五人は手分けしてヒクイドリを解体することにする。
俺がその気配に気づいたのは、そのときだった。
「…………」
草むらに気配に向かって、俺はすばやく槍を構えて近寄る。
猛獣だったらみんなを守らないと、俺はそんな使命感に燃えながら、草むらとの距離を詰める。
でも、草むらに近づくと違和感があった。
猛獣の匂いも、殺気のようなものを感じないのだ。
俺は、とある予感を得て溜息をついた。
「アオイ?」
がさごそと草むらが揺れて、アオイの赤面がでてきた。
「えへへ、バ、バレた?」
「うん」
と、俺は小さく頷いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます