第18話 ネズミ、リス、キツネ、タヌキ、シカ、ジャッカル、コヨーテ、ディンゴ、カンガルー、ガゼルより強い主人公
それから俺は、猛烈な勢いで動物を狩る日々を続けた。
ネズミ、リス、キツネ、タヌキ、シカ、ジャッカル、コヨーテ、ディンゴ、カンガルー、ガゼル。いまの俺が獲れる動物の幅はかなり広い。
シカも、牝鹿だけでなく牡鹿だって問題なく狩れるし、カモシカというちょっと変わったシカも狩った。
俺らだけじゃ喰いきれない肉は、いつも通り仲間の家族や集落のガキたちに喰わせてやる。そして一部の肉をおじさんに渡して、干し肉と塩漬け肉の研究に使った。
失敗したのはよく火を通してから俺が喰った。
それから仲夏を過ぎて、夏も終わろうという晩夏。
俺ら若者組の七人は、いつものように森へ狩りに来ていた。
ただし、いつもより森の奥へ、踏み込んだ。
鬱蒼とした森の木々が太陽光を遮ってくれるおかげで、残暑も辛くはない。いつ猛獣が出るかわからないというデメリットを除けば、森のなかは過ごしやすい。
今日の最初の獲物はカモシカだった。
シカ肉は美味い。鹿肉は正義だ。もっとシカはいないかと探すと、俺らはソレを見つけた。
シカだった。まぎれもなくシカだった。
でも、そのシカを見て、俺の仲間たちが絶句した。
理由は単純。
そのシカはデカかった。
俺らの知る牡鹿と比較すれば、倍はある。
足も太く逞しいし、角も立派だ。
仲間たちが、震える声で囁き合う。
「おいあれって、昔長老が言っていたやつじゃないか」
「エゾシカだろ? この森でいちばんデカいシカのヌシ様だ」
「大人三人分の体重があるって聞いたぞ」
その話は、俺も聞いた事がある。いままで何人もの大人がエゾシカを狩ろうとして、ことごとく返り討ちにあっていることもだ。
でも俺は口角を上げて、ためらうことなくエゾシカに立ち向かった。
大声をあげながら襲い掛かる俺に気づくと、エゾシカは角を俺に向けて突進してくる。
サイズが変わっても、俺がやることは変わらねぇ。
ただ狩り殺す。
それだけだ。
エゾシカまでの距離が残り十歩というところで俺は跳躍。すぐ近くの木の幹を蹴って大きく跳び上がると、エゾシカの上を取った。
エゾシカは頭を上げるが間に合わない。
俺は槍の穂先を下に向け、エゾシカの背中に槍で着地した。
俺の全体重と勢いをつけた槍はエゾシカの背中に突き刺さる。が、それも一瞬。
流石の巨体と言うべきか、俺の世界が揺れた。
エゾシカは激しく暴れ、背中の俺を腰で跳ねあげた。
槍が抜けて、俺は空中に放り出される。
俺は着地と同時に地面を転がり、勢いを殺すと、素早く体勢を立て直す。
エゾシカは興奮し、怒りに任せて小癪な人間に再び突進。でも、その突進にはさっきまでの勢いがない。
俺はエゾシカの角をかいくぐり、かがみこむと、その胸板に槍の穂先を叩き込んだ。
アバラ骨の隙間から内臓に達した槍は、一撃でシカのヌシ様の命を奪う。
エゾシカは二度、三度と体を痙攣させ、その場に倒れ込んだ。
「はっ、シカのヌシ様だかなんだか知らねぇが」
俺は、その場で槍を天に突き上げた。
「俺の方が強い!」
いつものように、六人が喜びながら俺に駆け寄って来る。
仲間の惜しみない賞賛に、俺は手をあげて応えた。
そのとき、変な奴が俺の視界に入る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます