シスコン兄のブラコン妹に転生しましたが、共依存は遠慮します。

@tukishirogekka

シスコン兄のブラコン妹に転生しましたが、溺愛は、結構です

思うに、もともと素養はあったのだとおもう。



はじめまして。私は乙女ゲームの攻略対象の妹、転生者だ。


本来の私は、幼かった頃、病弱で、しかも政略結婚で仮面夫婦の両親には愛されず、孤独。

そんな中で、シスコンの兄に溺愛され、ブラコンになったという設定だった。


ブラコンの兄は、悪役令嬢である婚約者を断罪するも、妹は手放さなかった。

そのため、兄を溺愛する妹と、ヒロインとシスコン兄という、何とも言えない三角関係で幕を閉じるということになる。


後日出た、ファンディスクでは、その関係性に精神を病み、妹は死亡したと書かれていた。

そのせいで弱りきった兄をヒロインは諌め、癒し、晴れて幸せになったそうだ。


いやいや、それ、兄も悪いでしょ!なぜ妹だけざまぁするんだ!?と突っ込んだ私は悪くないとおもう。


もっといえば、ファンディスクでは悪役令嬢の裏側がのっていて、ヒロインや、何処に行くにもくっついて回る妹に、節度を説くのがうっとおしすぎて、冤罪で婚約破棄されたとあった。


悪役令嬢、一番まともじゃないか。


と、まあ、そんなことを高熱で寝込んだ時、思い出した私は、一気に精神年齢が上がったせいで、冷静に今の状態を分析できるようになっていた。


思うに、共依存だったのだろうと思う。


愛情不足の兄妹が、生きていく為に盲目にお互いを愛し合っただけのことだ。


もちろん、今でも兄はすきだ。


しかし、色々な行動を監視するのはやりすぎだとおもう。うっとおしい。


と、いうことで、私は一計を案じた。


この頃から、悪役令嬢と兄は仲が良くなかった。正確にいうと、お小言が多い悪役令嬢を兄が疎んじていたともいう。


悪役令嬢もかわいそうな人だった。


家庭環境はこちらと、そう変わらない。

ただ、彼女には拠り所がなかったので、完璧な貴族であることを拠り所にしていた。


そうしていると、年に一回、両親から誉められるそうだ。ファンディスクにあった。


その回想シーンをみて号泣した人は少なくない。


しかも、頑張った結果、修道院にいって独り寂しくすごすか、嗜虐趣味の老人の後妻かしかないのだ。あんまりだ。


シーンの最後の独白に、私の人生はもう長くないでしょう。あの方のもとに嫁いだ方で一年と生きておられた方はいないのですから。ですが、それも良いでしょう。今日、久方ぶりに両親に誉められたのです。良い縁を結んでくれたと。私はこの幸福をもって、死という安寧の地に赴けるのですから。 とあった。


もう、思わず、悪役令嬢を攻略対象にいれろー!ビバ!百合エンド と開発会社に投書したね。


ということで、まずは兄に悪役令嬢の仲を取り持とうと思う。


兄に、お兄様が悪役令嬢のところから、逃げて来たときに、私はうるうる上目遣いでおねだりしてみた。


「今まで、お兄様が盗られてしまうと思っていえなかったのですが、私、お姉さまも欲しかったのです。お兄様の婚約者なら、お姉さまですのよね?盗られるなんて思わなくて良かったのですわ。

お願い、お兄様、お二人と一緒にお茶したいの」


お兄様は苦い顔をしながらも、頷いた。


三人でティータイムすると、すかさず悪役令嬢は嫌みを言ってきた。


「あら、殿方ですのに、紅茶もストレートで飲めませんの?品位を疑いますわね」


むっ、とした兄が何か言う前に私は幼子特有の無邪気さを装い言った。


「あれ?お姉さまもこの後、ミルクティーのんでらしたわよね?糖蜜入りの。私に進めてくださったじゃない。あれ、美味しかったの。あの時は素直になれなくて、ごめんなさい。またいれて欲しいなー」


悪役令嬢は顔を真っ赤にしてうつむいた。


たぶん、何もいわれずにお茶を楽しめるお兄様が羨ましかったのだろう。

ミルクティーを飲んだあと、なにか言われていたみたいだったから。

高位貴族はお茶ききもできないといけないから。


兄はそんな悪役令嬢を見て、ニヤニヤしはじめた。


「おや?糖蜜まで入れたのかい?妹が美味しいと言っているね。僕にも同じものをいれてくれるかい?」


悪役令嬢はキッとこちらを睨み、椅子を揺らして走り去ってしまった。


「へぇー。からかうと、案外面白いなぁ」


兄はボソッと呟いた。


腹黒兄、人のこといえないが性格が悪いな。

なんにせよ、とりあえず興味はわいたみたいで良かった。次のステップだ。


「お兄様、お姉さま、走り去ってしまいましたよ!追いかけないと」

「えー!面倒だなぁ。というか、妹、わざとじゃないの?」


探るように見てきた兄に、きょとんとした顔を返す。


「?なんのことですの?」


いぶかしむように、じっと見てきたが、ふっと一息ため息をはいた兄は席をたった。


「わかったよ。妹もきてくれる?」


「もちろんですわ」


悪役令嬢を探して、薔薇の垣根にたどりつくと、ひっそりと悪役令嬢がしゃがみこんでいた。

そばには、お付きのメイドだ。


「お嬢様、先ほどのはマナー違反です。旦那様にご報告いたします。」


淡々とつげるその顔は冷めきっていて、とても主につかえるものとは思えなかった。


「‥ぐすっ。それはやめて。ほめてもらえなくなってしまうわ。

ねえ、どうして彼らは高位貴族なのに、甘いお茶で良くて、私はいけないの?彼らも高位貴族でしょ?」


「お嬢様、他家は関係ありません。ミルクティーは庶民から発した低俗なもの。そんなもの、お嬢様には必要ありません。」


悪役令嬢は、諦めたように地に視線をうつした。


「聞き捨てならないな。それは僕らのことを高位貴族にあるまじき、と、一介のメイドが非難しているに等しいんだが、わかっているのかな?その態度、目にあまるね。彼女のメイドはこちらでつけるから、君はもう帰りたまえ。」


「なっ、私はクルシャ公爵家のものです。そのような口を!」


「ああ、あの当主の愛人の‥。で、君自身の身分が公爵なのかな?ちがうなら、直系の侯爵子息に口答えしていいとでも?」


メイドはだまって、こちらを睨みつけた。


それには構わず、兄は悪役令嬢に歩みより、片膝をついて手を取った。


ちゅっ


手の甲に口付けをし、キラキラした笑顔で告げる


「突然の申し出でごめんね。最愛の婚約者にこんな無礼なメイドがついていることに怒ってしまって。君さえいいなら、君はいずれ僕のお嫁さんになるんだから、当家のメイドをつけさけて欲しい。どうかな?」


メイドは悪役令嬢をにらみながら、頷くなと言っているが、顔を真っ赤にして兄を見つめている悪役令嬢の視界にははいらなかった。


コクリと悪役令嬢が頷くと、兄は護衛に指示をだし、メイドを追い出し、ついでに、執事から、メイドの無礼についての抗議書を書かせとどけた。


呆然としている悪役令嬢を面白そうに見た兄は、悪役令嬢の肩を引き寄せ、後ろからぎゅっとした。


ボンっ


悪役令嬢は真っ赤になって目を回してしまった。


兄はクスクス笑うと、木陰に敷物をしかせ、悪役令嬢に膝枕をして、のんびりと、本を読みはじめた。


私はそっと、その場を後にした。


どうやら、上手くいったらしい。


兄はその後、乙女ゲームほど、シスコンにはならず、その分の愛情を悪役令嬢に向けるようになった。


悪役令嬢がかおを真っ赤にするのが可愛いんだそうだ。ついでに、素直じゃない悪役令嬢から、本音をあの手このてで引き出すのが、楽しくて仕方ないらしい。


虐待されていたとわかった悪役令嬢は、あの後、家の離れに早すぎる花嫁修業として引き取られた。

どうやら、兄が手をまわしたらしい。さすが腹黒謀略家。


そのせいで、兄にちょっかいをかけられるたび、私のところに逃げてくるようになった。


わたわたしながら、のろけか、愚痴かわからない話を涙目、赤い顔でする悪役令嬢に私もメロメロだ。ちょっとだけ、御愁傷様だなんて思ってない。


兄と悪役令嬢は、15才で早々に結婚し、姉になった。姉は腹黒溺愛系の兄の愛に日々溺れている。


幸せそうで何よりだ。兄も、幸せそうで、いつものろけてくる。ごちそう様です。


ヒロイン?攻略される前に結婚した兄は、アプローチされても、その存在すら視界に入れなかったそうだ。



こうして、不幸な依存から、幸福な兄妹になり、ほどほどに愛された私は、自由になるべく、政略結婚を言い出される前に家を飛び出し冒険者になった。


とりあえず、しばらくは恋愛はいいや。

ノーモアヤンデレ。ノーモア束縛。


そう思っていたのに、厄介な人に追いかけられ、捕まえられ、逃げる攻防を繰り広げるのはまた、別の話。

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