第11話 魔道具作り

次の日から、魔道具作りを開始する。

魔力を貯える魔道具からだ。戦闘時の魔力切れは生死に係わるしな。

魔道具にはコアという核が必要となり、一般的には魔石に魔法陣を描いたものが使われる。

これだけでも魔法を発動させることが出来るが、魔道具とするには大きすぎる。

その為、整形と言う作業を行い1cmサイズの丸いコアに圧縮する。

使用する魔石の質、描く魔法陣の精密さ、そして歪ない整形が魔道具の性能に大きく反映される。

全てが魔道にとっての重要な作業だ。


魔力を貯える魔道具の素材は黒曜石の様な黒いツヤのあるガリウム鉱石。

この鉱石にはが魔力を貯え、保存する性能があるらしい。

両手に抱えきれない程の量に対して魔力を込めて成形していく。

魔力切れを何度も繰り返し、手の平に乗る程度の大きさまで圧縮した。


『ここまで圧縮できるとは思わなかった。本当に出鱈目な魔力量じゃな。』


あきれるようなグリムの声が聞こえる。

そんな事を言われても、普通が分からず何とも言えない。

圧縮したガリウム鉱石で腕輪を作りコアを組み込めば作業は終了だ。

右腕にはめて魔力を流してみると、リングに溜まっていくのが分る。。

そして、リングに込めた魔力も問題なく放出できた。

浩司の渡すと、喜んで腕につけ、魔力を流し始めた。

そのまま魔力切れになるまで続けたのには呆れてしまったが、それでも腕輪の容量に対して半分程度だ。


それにしても、魔道具を簡単に作れると思ったら大間違いだった。

魔石に描く魔法陣が非常に細かく難しい。

グリムがイメージを頭に送ってくれるが、描くのを何度放り出したくなった事か。

1つは作り上げるのに3ヶ月もかかってしまった。

これでも、グリムに言わせると早いらしい。

普通だと呪文を唱えながら描くため時間がかかり、さらに魔力切れをおこすため作業時間が制限される。


次に作ったのはアイテムボックス。

白磁鉱石という鉱物を闇魔法で錬成する事で空間を作り出す事ができる。収納物を闇の魔力で覆い、その空間に引き込むようにして収納する。

コアは、グリムが予備で用意しておいてくれたのを使う。

描かれている魔法陣は、俺が描いていたのでは数年は掛かってしまいそうな非常に細かい物だった。

ガリウム鉱石と同量の白磁鉱石が有るが、これは俺が使うだけなので、ガリウム鉱石の時の半分のサイズまで圧縮し、右腕の黒いリングと同サイズの白いリングに生成し左腕につけた。

感覚的には、大きな体育館2個位の容量は有りそうだ。


『1人で白磁鉱石をそこまで圧縮するとは、本当に非常識じゃの。』


グリムが呆れてきているのは、聞き流す事にした。

浩司が羨ましがって大変だったので、次は拡張バッグを作る事にすると、嬉しそうにまとわりついて来る。

何度も念押ししてくるなんて、お前は子供か。

と突っ込みたくなるが、妙に可愛らしくて笑ってしまう。そんな俺を見て


「自分でも、はしゃぎ過ぎたと思うけど、やっぱり期待するだろ。」


少し拗ねる浩司に、俺は更に笑ってしまった。


拡張バッグは魔石で作ったコアと黒磁鉱石を加工した物でバッグの内部空間を黒磁鉱石で歪め、その状態を固定する。

容量は白磁鉱石より格段に劣り、その容量も入れ物の素材に依存するが、作られた魔道具は誰にでも使えるメリットがある。

バッグは以前倒したレッドタイガーの皮を使いデイパッグ型の物を作り、コアを何とか作り上げバッグの中を拡張させると8畳部屋くらいの容量になる。

それを浩司に渡すと、手当たり次第にバッグに入れて大はしゃぎ。

そんなに喜んでくれて嬉しいが、大学生としては喜び過ぎではないだろうか。



俺が魔道具を作っている間、浩司は旅の間の料理を作っていてくれた。

台所に置いてあった拡張ボックスに保管しておいた料理を一挙公開。。

主食だけだが大量のパスタにうどん。メレンゲを使ったパウンドケーキもある。

2人で半年は過ごせそうだ。


「こんなに作るなんて凄いよ。」


「どうなるか分らないから、多めに用意してみた。在庫も残っているからもっと用意するけどな。

 これでも良く菓子作りをしていたんだよ。それなりの腕前だろ。

 おかずは、拓ちゃんと一緒に作りたいんだけど手伝ってくれるか?」


「もちろん。作ったのをアイテムボックスと拡張バッグに移しておこうか。」


菓子作りをしていただけあり、料理の腕の上達が早い。


「後作るので時間がかかるのは、魔力結界を張る魔道具、移動速度を速める魔道具と拡張させた水筒を2つかな。

 通信機能を持った魔道具は今は諦めて。グリムでもそんな魔道具は聞いたことが無いって。」


冬が終わり、この世界に来てから約2年、住み慣れた家を出て人里に行く事にした。

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