二章 ドラゴン・バケーション
第40話
「~~~♪」
運命の出会いから早4か月。季節は8月を迎えていた。世間は夏真っ盛り。そしてそんな事などおかまいなしに自宅でのんびりと寛ぐ1人の男。金本大助は相変わらず植物の栽培に勤しんでいた。
「ようやく至高のダラダラライフにも慣れてきたってところかな」
目の前に広がる広めのリビングを目の前にして、彼はそう呟く。大助が大金を手に入れたらいつか叶えたいと願っていた野望の一つ。それは一軒家を購入する事だ。家を持つという事。それはすなわち一国一城の主となるということ。世俗の繋がりにうんざりしていた大助からすればそれはもう喉から手が出る程欲していたものだ。
「やっぱ郊外の中古物件を購入して正解だったぜ。周りに家もないから静かでいい」
大助が購入した物件は評価額600万の普通の一軒家だ。新しくもなければ古過ぎるというわけでもない。極々普通の一軒家。だがそれが良いのだ。
(あんまり高過ぎる家を買うと固定資産税がとんでもない事になるからな)
巨大な家を購入したところでそこに住む住人は大助一人だ。管理の問題もある。それはまさしく金と時間の無駄というやつだ。そんな示威行為に彼は1ミリも興味などない。
「それにしても今時珍しいレベルの古風な庭だよな。小さい池に謎の小屋。あとあれは灯篭か?なんか祠みたいなのもあるが」
自宅の庭先に出た大助から出た感想がそれだ。そして購入を決めた決定打でもある。大きめの庭は小さな神社のようになっているのだ。不動産業者もこの光景には驚いたらしい。
「俺の面白センサーがビンビン反応してんのよ。こりゃ間違いなく何かあるとな…」
満足気に頷き窓を閉める大助。今まさにファンタジーの只中にいるというのに、さらにその先を求めてしまう。この男は本当にどうしようもない男なのだ。
何者にも邪魔されず、ただひたすらにスマートフォンの画面をタップしつづける大助。初めの一か月間こそ有り余る時間をどう使うか悩んでいた大助だが、そんな生活も2か月続けば慣れてくるものだ。そして彼のスマートフォンに待望のメッセージが表示される。
「おめでとうございます。栽培レベルが上がりました」
「お?なんか久しぶりな気がするな」
(必要な経験値が上がってきたって感じかな。まあそれはそれでやりがいがあるってもんだが)
「栽培可能なリストが追加されました」
「いいねいいね~!」
(今回はどういうタイプの草が追加されたんだろうな?めっちゃ気になるぜ)
「フリーマーケットモードが解放されました」
「…フリーマーケットだ?」
(何だ? ショップとは違うのか?)
「クラウドファンディング機能が解放されました。ショップより参加が可能です」
「クラウドファンディングだぁ?そんな事して俺に何のメリットが……」
(いや、そう判断するのは早計か。何か特典のようなものがあるかもしれない)
「一定条件を満たしたため、世界レベルが2に上昇しました。詳細はチュートリアルを確認してください」
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