第5話

 大助がベッドに横になり、スマホを手に取る。


(え~と、栽培可能な植物リストは……あった。これだな)


「異世界の植物ってのが気になるな…」


 異世界。その言葉だけでも大助の心は踊りだす。彼が渇望していた非日常、それにもう手がかかっている状態なのだから。


☆現時点で栽培可能な植物リスト☆


・ラルメン王国の雑草

・ニクク王国の雑草

・メルマ王国の雑草


「これ全部雑草って事だよな?こんなの育てて意味あるのか」


 口ではこう言っているものの、彼の内心はミッドナイトパレード状態だ。非日常最高!ひゃっはー!!と叫びたい。めっちゃ叫びたい。だが彼はそれを必死に堪えていた。何故ならば大助が生活するこの家は集合住宅。こんな夜中に大声を出そうものなら200%ご近所トラブルが発生する。それだけは大助も避けたいのだ。


(ん?詳細なんて確認できるのか。とりあえず見てみるか)


 大助のスマホ画面に草の詳細情報が表示される。


・ラルメン王国の雑草


ラルメン王国周辺のどこにでも生えてる草。微量の魔力を帯びている。


「……魔力だぁ?」


(まさか、これを食べれば魔法を使えるようになるとか…)


「いや、流石にそんな簡単にはいかないよな。大体魔法なんてどう使えばいいのか分からない。というかあるのかどうかも分からねえしな」


(だけどまあ、面白そうだし普通に育ててみるかな)


・ニクク王国の雑草


ニクク王国周辺のどこにでも生えてる草。すり潰してお茶としても使える。


「どんな味がするのか気になるな」


(お茶も粉末タイプのやつとかは微妙に高いからな。これを育てれば家計にもプラスになる…かなぁ?…結局100円とか200円の違いしかない気がするが)


・メルマ王国の雑草


メルマ王国周辺のどこにでも生えてる草。乾燥させると軽微な幻覚作用や高揚作用などがある薬を生成できる。


「ちょっと待て!これはダメだ!」


 幻覚に高揚作用。そこから導かれる答えなど1つしかない。そう、日本では持っているだけでアウツな白い粉だ。


(日本ではこいつはアウトだ。…まあ最近だとCBDとかそういう合法のやつもあるらしいが、とにかくこの手の物には手を出さない方が無難だろ)


「ん~。中々悩ましいラインナップだな」


 大助は数分程悩む。この悩む時間すら大助にとっては幸福な時間だ。悩み楽しみながら大助は育てる草を決めた。


「よし。とりあえずラルメン王国の雑草を育てるか」


 ラルメン王国の雑草を地面に植える。そして大助はひたすら画面をタップした。


「ふおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 ただただ無心に画面を押しまくる大助。彼自身こういう何も頭を使わない作業は嫌いではなかった。そして無事にラルメン王国の雑草が完成する。

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