誰も教えてくれないアニメ業界の話

石矢天

アニメ化したくなる原作を教えます【2022年版】


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   §   §   §   §   §



 『アニメ化したくなる原作』の話をするまえに、まずはココの認識を合わせないことには始まりません。



Q.なぜアニメ化するのか?


 たまに「原作を売るため!」なんて仰る方もいますが、それ出版社しか嬉しくないですよね?


 TVシリーズのアニメは30分枠×3ヶ月(いわゆる1クール)の製作費で、だいたい3〜4億円くらいかかってます。


 めちゃくちゃ高いです。

 ほとんどの場合、アニメ化による原作の売上増の幅より圧倒的に高いはずです。


 ぶっちゃけてしまうと、近年、高画質なアニメを求められるので高騰しています。


 10年前より製作費は1億円くらい上がっている、なんて噂もあったりなかったり。


 私がアニメ村に入村する前の話なので、よくわかりません。


 ちなみに、アニメ制作費(スタジオに支払うお金)は1話あたり2000万円〜3000万円が相場です。


 もちろん、もっと安く低クオリティで作っている作品もありますし、『鬼滅の刃』みたいに、あきらかにもっとお金がかかっているハイクオリティな作品もあります。


 あくまで相場です。


 そこに宣伝費やら、波(テレビ放送枠)代やら、劇伴(楽曲)費やらが乗ったり乗らなかったりして、製作費という名の総事業費が出来上がります。


 3〜4億円の総事業費を複数の会社で出す、製作委員会と呼ばれる組合は、当然【お金を儲けるために】アニメを作っています。


 ご存知の方も多いと思いますか、製作委員会で黒字化しているところは全体のごく一部で、ほとんどは赤字です。


 『呪術廻戦』のような超人気原作で「アニメ化すれば確実に黒字だぜ!」みたいな作品はそうそう転がっていません。

 

 アニメの権利を使って自社の事業で赤字を埋めたり、『ゾンビランドサガ』のような無名作品の奇跡的な大ヒットで赤字を埋めたりしています。


 元来、コンテンツ投資というものはそういうものです。


 それでも投資を続けていくために、


「赤字でも回収率を上げたい」


「アニメが始まる前に確実な売上を立てておきたい」


 製作委員会のメンバーは、常日頃からそんなことを考えています。


 さて、そんな都合の良い話があるのでしょうか?



 なんと、あるんです!!



 その1つが、いまアニメビジネスの売上の半分以上を占めている『海外ライセンス販売』です。


 は? 『海外ライセンス販売』ってなによ? って人のために、まずはアニメの権利の話をしましょう。


 アニメ化をすると、ざっくりこんな権利が生まれます。


 ・動画配信(HULUとかU-NEXTとか)

 ・パッケージ(DVDとかBlu-rayとか、円盤とも)

 ・商品化(グッズとか、タイアップとか)

 ・ゲーム(携帯向けのアプリとか)

 ・遊技機(パチンコ、パチスロ)

 ・音楽(アニメタイアップ) などなど


 細かくは、ほかにもあるんですが皆さんがイメージしやすいところを、馴染みのある表現でピックアップしました。


 ゲームや遊技機はほとんど決まりませんし、円盤は売れないし、グッズは収入が小さいので、動画配信がメインですね。


 これらの権利の窓口をまるごと海外の会社に売っちゃうのが『海外ライセンス販売』です。


 正確には窓口権を渡して、ロイヤリティの先払いによって最低保証額(ミニマムギャランティ)を貰うことを指します。


 アニメの権利そのものを売っているわけではないので、海外でグッズが出るとか、ゲームが出るとか、配信が始まるとかあれば、必ず製作委員会にお伺いがきます。


 その金額がだいたい○億円!!


 すみません、ここは伏せさせてください。


 とりあえず、すごい高値で売れるんだな、ということが伝われば大丈夫です。


 最近は海外も前ほど高値がつかなくなっている、なんて話もあって、まあ事実なんですが、それでもまだまだアニメビジネスの大黒柱です。


 それでは、ここでタイトルに戻りましょう。


 Q.アニメ化したくなる原作とは?


 A.海外で売りやすい原作


 ということになります。

 では次の質問は当然、


 Q.海外で売りやすい原作とは?


 ということになりますね。

 ようやく本題まできました。


 ここまで会社の座学のようなテキストをお読み頂いた皆さまには、特別に教えちゃいます。


―――――

 ■1.ジャンプとかマガジンとかで、めっちゃ有名な作品


 これは説明するまでもありませんね。

 次に行きましょう。


 上記の作品が軒並み決まったあと、小説投稿サイトのPVが高く、書籍(コミカライズ、電子書籍含む)の売上も及第点の作品から選定します。


 海外で書籍(コミカライズ含む)が出版、web配信されていて、そちらの売上も良いと、頭ひとつ抜けます。


 ■2.海外で人気のジャンル


 これを執筆している2022年3月では、異世界系ハイファンタジーとハーレム系ラブコメが人気と言われています。


 ハイファンタジーは全世界で共通の世界観を共有できるところが強みです。文化の壁を軽々と乗り越えます。


 異世界転生ばかりで、さすがに食傷気味では?という声も聞こえますが、実績のあるジャンルはなかなか切れないようです。


 ハーレム系ラブコメは『五等分の花嫁』の大ヒットあたりからでしょうか。


 一方、『からかい上手の高木さん』のような、クラスの特定の男女による狭いラブコメはあまり人気がありません。


 ストレートに言うと、現時点で上記の2ジャンル以外のweb小説がアニメ化される可能性は、非常に低いです。


 他作品を押しのけるほど話題になるか、他にプラスの要素が無いと厳しいです。


 もちろん、これらは今の流行りなので1、2年後はどうなっているか分かりません。


 webtoonの影響で『俺だけレベルアップな件』や『盗窟王』のような国ごとにローカライズ対応したローファンタジーが伸びてくる、と個人的には見ています。


 ちなみに、ここの人気ジャンルにはNetflixオリジナルやAmazonPrimeオリジナルを考慮していません。あれはまた特殊な座組なので。


 ■3.海外のNG表現にひっかからない


 まず、エログロは規制が厳しいです。

 中国では同性愛も取り締まられます。

 特定の宗教に触れている作品も嫌がられます。


 ■4.文化的な壁がない


 日本独自の文化を題材にした作品は海外には売りづらいです。

 たとえば幕末転生や和風ファンタジー、お仕事モノとかですね。

 予備知識が無いと楽しめない作品は嫌がられます。


 文化的な壁を逆手に取り、『薔薇王の葬列』のような、欧米にターゲットを絞った作品は逆にアニメ化しやすいです。

 アニメ化前ですが、『薬屋のひとりごと』なら中国の会社が買ってくれそうな感じしますよね。


 ■5.ゲーム化しやすい

 

 これは国内も同じですが、携帯向けアプリゲームの市場は当たれば大きいです。

 韓国のゲーム会社、ネットマーブル配信の『七つの大罪』のゲームアプリは日韓でランキング上位に入って話題になりました。


 結局、キャラが豊富で能力バトルがあるファンタジーが強いってことになっちゃいますが。


―――――


 こんなところでしょうか。


 もちろん、海外ライセンス販売に頼りきらない方法で投資を回収しているアニメ作品も少数ながらありますし、原作が弱くても有名なアニメスタジオが作れば海外も売れちゃうので、あくまで一般論としてお読みください。


 皆さまの作品がアニメになる日を、私も楽しみにしております。


 そのときは、もしかしたら私が関わっているかも?


―――――――――――――――――――

 最後までお読み頂きありがとうございました。


 アニメビジネスに関する「これなんで?」な質問などありましたら、コメント欄にお書きください。


 答えられる範囲でお答えします。

 長くなりそうなときは、次話を追加します。

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