第17話 ロックオン

――先輩、今日はハト集会に行くんですが、ご一緒しますか?

 なんてハトが言うものだから、カラスは即丁重にお断りした。

 何故って? あのハト以外にもハトが大量にいるんだぞ? 俺の精神がもたない。カラスはそう心の中でぐああしたものだ。

 

 「ま、ハトの奴も一羽じゃなきゃ、そんな無茶はしねえだろ」なあんて気軽に考えたカラスは、お散歩に出かけることにしたのだった。

 それがいけないことだったのだ。カラスは自身の軽率な行動を後悔しても後悔しきれない。

 

「缶詰はないのか? マスター?」

「今日は無い……」


 なんでこいつにロックオンされているんだよおおお。カラスは叫びたいが、こいつを興奮させると自分がやられかれないからグッと我慢する。

 あと何だよ「マスター」って、俺はお前を雇ったつもりなんで羽毛ほどにもねえ。

 

「なら……狩るか?」


 目をギラギラさせてぶっそうなことをのたまう奴へカラスは冷や汗を流す。


「あ、そうだ。蛇食べるか?」

「ほう……。あいつらでもいいが……?」


 奴が射殺せそうな眼光で睨んだ先にいたのは、芋虫を突くスズメたちだった。

 あ、あいつらは……三連星か……。

 

「い、いや、まあ見てろって」

 

 カラスは奴の機先を制してその場で待たせるとさっそうと飛び上がる。

 このまま脱出してもよかったのだが、寝首をかかれてはたまらない。何しろ奴は夜行性だからな……さすがの俺だって寝ている間は警戒心が落ちる……。

 カラスは獲物を探しながらもそんなことを考えくああと息を吐く。

 

 哺乳類の中でも目が良い種族だって、鳥にはまるで敵わないのを知っているだろうか? 特に波長を見ることにかけては雲泥の差があるのだ。

 鳥は爬虫類と同じ四色型色覚。人間は三色、奴は二色。くええ!

 

 と悦に浸っていてもも仕方がないとすぐに気が付いたカラスは目を凝らしターゲットを発見する。

 よし、あの位置ならば空からの急襲で一撃だ。しかし、背筋に嫌な予感が走ったカラスは奴を待たせている方をちらりと見やる。

 

――いないじゃねえかよ!

 カラスはつい突っ込みを入れた。どこだ……奴はどこにいる……?

 

 いたいた。それほど動いていなかったが奴はハトと向き合っているじゃあねえか!

 や、やばい。奴の目は獲物を狙う目そのものじゃないか!

 

 カラスは急ぎ奴の元へ舞い戻る。

 

「あ、先輩。ちいいいいっす」

「おう、マスター。首尾はどうだ?」

「え。あ」


 何だか思ったより和やかな雰囲気にあっけにとられるカラス。

 

「先輩ー。まだなら僕も手伝いますよー」

「ちっ。マスター……やはり、あいつらにするか?」


 ループ、これなんのループなのおおお。カラスは若干混乱しつつもハトと共に再び獲物を獲りに行くことにしたのだった。

 今日は厄日だ……カラスがそう思ったとかなんとか。

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