第13話 ゴルフ
どうしてこうなった……カラスは軽い気持ちで行動してしまったことを激しく後悔していた。
時は少しだけ遡る。
ほよよよよーーん。
――都内某所のいつもの駅舎の屋根
カラスとハトは駅に入っていく愚かな人間たちを眺めくあくあしていた。
「先輩、今日は少し人間たちが少ないっすね」
「そら休日だからな」
「へええ。人間たちも休むんですね」
「あいつら休日って言ってもあくせく動いているみたいだけどなあ……くああ」
「全く元気なことですねえ。くえええ」
カラスとハトは屋根から首だけを乗り出して力一杯人間たちへくええええする。
それで満足した二羽は、ほおおと息を吐くのだった。
「ところで先輩、人間たちって何してるんすかね? 休日に」
「そうだな。ゴルフとか釣りとか……」
「ゴルフって何するんですか?」
「こう小さい玉をだな、ゴールに放り込むんだ」
「へええ。面白そうっすね!」
「行ってみるか!」
なんてことになり、彼らはゴルフ場へ向かったのだ。
しかし、道すがらトンビに絡まれ、スズメたちがゴルフ場にいたりして大賑わいになってしまった。
元々、好き勝手に動く彼らが集まったものだからまるで収集がつかない。元よりカラスは彼らをまとめる気などありもしなかったわけだが……。
とはいえ、優雅にゴルフを楽しもうと思っていた気持ちが台無しにされたカラスは、くああしていたというわけだ。
「で、何するんだ? カラス?」
「おい、カラスの野郎! 今度は負けないぞ!」
トンビとスズメ三連星が囀る。
あー、もう帰ろうかなとカラスは思うが、ハトがさきほどからキラキラした目でカラスを見つめているものだからどうにも翼を動かすには気が引ける。
仕方ない……説明するか。カラスはそう心の中でくええした。
「ええと、人間たちがボールを叩くと空中にボールが飛んで来るんだ。そいつを嘴で掴んで、緑の円形……グリーンにある穴ぼこに入れる」
「ふむ。面白そうだが……俺が嘴で挟むとボールが潰れるぜ?」
「おい、カラス! 俺たち三連星の嘴じゃあボールは掴めないぞ! どうしてくれんだ!」
知らんがなとカラスは突っ込みたい気持ちになるが、絡んだら絡んだで面倒になると思い無視を決め込む。
「じゃあ、ハト、やってみるか?」
「はい!」
グダグダ煩いトンビたちを残し、カラスとハトは空へと飛び立つ。
ちょうど、ボールが飛んできてカラスが見本だとばかりに嘴でボールをキャッチするとグリーン上空へそのまま飛んでいく。
穴(カップ)へ狙いを定めて口を開くと、ボールが落ちグリーンをボールが転がっていく……しかし、穴の周囲をクルリと回転したボールはそこで動きを止めてしまう。
「くああ!」
「惜しいっすね! 先輩。今度は僕が!」
「おう、やってみな」
「はい!」
しかし、ハトの口にボールが収まらなかったため、彼らはゴルフ場を後にしたのだった。
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