だれかの日記
寅田大愛(とらただいあ)
1月1日
猫を殺すとか言う大人にならんやってよかったね、とすれ違いざまに見知らぬ人に言われたけど、たぶんあたしのこと。そんであたしは確かに猫は殺さない。実際にはね。だって猫って美味しそうだから、きっと食べたら美味いんだろうなと言う気はしている。でも要らない。食べ物には不自由していないから。同様の理由で、人も殺さない。食べるもの、もっとおいしいもの、他にたくさんあるし。
シャムネコ美味しそう。だって鼻と手足が黒いから。
人間不味そう。ゴムみたいな肉の味がすると聞いた。じゃあ要らないよ。
牛とか豚とか鶏とか食べておいしいように改良されて今に至るから美味しいのであって、生肉がみんなうまいのかと言うとそういうわけではないんだろう。野菜もしかり。
アボカドにドレッシングをかけて食べるのが今お気に入り。美味しいよね。アボカド。みんな好きなんだって。そういうものなんだろうね。なんか適度にお洒落感あるし。うん。
あたしは息を空に向かってふうっと吐きたい気持ちでマスクのなかでこもった湿った呼吸をした。
あたしは永遠にソーシャルディスタンスをしていたいので、すれ違いざまに汚い言葉を吐きかけてくる人に向かって抗菌スプレーをまいてやりたいな。
ばい菌あたしに近寄ってくるな。永遠に抗菌していたいの。うるさいから。言葉たちが。通行人の。死ね。ファック。
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