第18話 なんだかなぁ

 それは、今日の午前中の事だった。

いつものようにアパートの掃除の仕事をしていた時、ある一室のドアが開いた。


出て来たのはボロボロの服を着たじいさん、両手に煙草と酎ハイの缶を持っていた。


そして、僕を見てこう言って来た。


「あんた掃除してんの?」

「はい。」


僕は答え、単なる挨拶かと思っていた。ところが………。


「俺は見ての通り金が無いんだ! 服だってボロを着てるし、解るだろう?」


一瞬、何が言いたいのか訳が解らなかったが、どうやら僕がアパートの掃除をしているのを大家さんの親族と勘違いしたらしい。


話を聞くと、家賃が高いとか、金が無いからロクに食べてないとか。

要するに、僕が大家さんの親族だと思っていて、家賃を安くしろというものだった。


僕は「いえ、僕は大家さんじゃないですから。」と言ったのだが、じいさんは聞く耳を持たない。


兎に角、「家賃を安くしろ」の一点張り。こっちの話を聞いちゃいない。


僕は早々に切り上げ、その場を後にした。


しかし、金が無い割には酒と煙草をやっているし、本当に金が無ければ酒も煙草もやっていない筈である。


完全に酔っ払っていると確信し、僕は途中で話を切り上げた訳だ。


で、会社に戻って社長にその出来事を報告したら、笑いながら答えた。


「ああ、あの人ね、精神病らしくてね、うるさくして近所の住人とか迷惑してるって、よく噂になってるよ。」


なるほど確かに、会話も嚙み合わなかったし、何日も風呂に入っていないような酷い臭いだったし、近所の迷惑な人という事かと納得した。


僕も統合失調症の精神病なので、人の事は悪く言えないが、あれは酷かった。


自分の事しか考えてないし、他人の言う事は聞きゃしない。

ああいうのをきっと老害と言うのだろう。


夜中にも叫んだりして、ご近所トラブルをしょっちゅう起こしているらしい。


歳を取っても、ああなりたくないと思った。

未来の事は誰にも解らないが、少なくとも、僕はしっかり生きようと思う今日この頃だった。


ではこのへんで。




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