第5話 学歴か………
これは僕がまだ20代の頃のこと。
諸事情のより仕事を辞め、次の仕事先を探していたが、
「バイトでもいいか」と思い、アルバイト情報誌を手に色々と探していた。
コンビニのバイトをしようと、バイト募集の広告を見て電話したのだが、
電話に出たのが若い女性の声だった。
「すいません、アルバイトは募集していますか?」と伝えると、
「歳は幾つ?」と尋ねられたので、
「21です」と答えると「大学生ですか?」と聞いてきたので
「いいえ、大学は行っていません」と言うと、
明らかに馬鹿にした声で「え!?高卒ですか」と言ってきた。
僕は「いえ、中卒です」と答えると、「はあ!?」とこれまた明らかに信じられないといった声のトーンで言ってきた。
どう聞いても相手の女性は学生っぽい感じだ。
僕は様子がおかしいと思い、「あの、人事の方に取り次いで下さい」と言うと、
その女性は馬鹿にした感じで「今バイトの募集はしてない」
と言って一方的に電話を切った。
僕は思った、相手の女性は自身が大学生で、バイトに大学生か大卒を期待していたと。
後日、気になったので件のコンビニへ出掛け、缶コーヒーを買ったのだが、
レジの若い女性は商品を投げる様に扱い、お釣りのお金も雑に取り扱っていた。
こいつだ。
と思い、丁度ビニール袋が欲しかったので(まだビニール袋が無料の頃)僕は「袋に入れてください」と言うと、バイトの女の子は「コーヒー一つで?」と言った。
仕方なくその場を後にして、車の中で缶コーヒーを飲みながら思った。
やはりあの女の子は学生で、同じバイト仲間に大学生か大卒を求めていたのだと気付いた。
だからどうした。と言う訳じゃないが、ただ一言、「学歴か………」と呟いた。
まあ、勉強してこなかった自分が悪いのだが、
だからと言って学歴が下の相手を馬鹿にしたり、見下して良い理由にはならないと思った。
じゃないと、僕はただ、悲しいと思った。
コーヒーは美味かったが。
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