第10話 生後15日目


 濱田さんにそろそろ保温機から少しずつ外に出してみましょうと言われたので、1指ずつ出すことに。


 まずはゴン太から。


 保温機のカゴからゴン太を出そうとすると、他の子達がくねくねと寄ってきた。


 みんなも出たいのかな?


 外と言っても、本当の外に行くわけではなく研究所の室内に出るのだ。


 手でゴン太を優しく覆い保温機からゆっくりと出す。


 ゴン太はブルブル震えている、少し寒いのかな。部屋の温度は25度を設定していたが、もう2度程上げる。

 まだ震えている、もう2度上げる。

 結局29度で落ち着いた。

 

 私は額にじわりと汗をかいていた。


 椅子に座り、膝の上にブランケットを広げてゴン太を置く。


 私はゴン太が落ちないように手で囲った。


 最初はくねくねと動くだけだったのが、視線を感じたのか、私の顔を見上げるように上を向き、固まった。


 私はそっと小さな声で話しかけてみた。


「ゴン太くん〜」


 すると声にビックリしたのか指を曲げた。


 なんだかおかしい格好だなと私はフフッとしてしまった。


 ゴン太は顔が濃く親指という事もあって強そうに見えるが、性格は小心者なのか?


 どんな子になるんだろう、楽しみだ。


 10分程経ったところで濱田さんから声がかかり、保温機にゴン太を戻すと、他の子たちがまたくねくねと寄ってきた。


 今日ゴン太はみんなにどんな風にお話しするんだろう。


 明日は誰の番かな〜。


 

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