あの男のこと

筑紫榛名@12/1文学フリマ東京え-36

(一)

 夜九時を回った頃、自宅のインターホンが鳴った。さらに続けてドアのノックする音とともに私の名前を呼ぶ男性の低い声がした。

 リビングのソファでくつろいでいた私は、「はいはい」とつぶやきながら玄関に行って、何度も叩かれているドアを開けた。

 するとそこにはジャケットを着た高齢の男性とスーツ姿の真面目そうな青年が立っていた。

 パッと見た感じ、怪しい二人組だった。強盗かなにかか。それともレイプ魔か。一人暮らしの女性の部屋を狙い、宅配便を装って訪問し、ドアを開けた隙に部屋に押し入るという手口があるというが、もしかするとそれか。


(続く)

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