第19話 アイツに会う

―――事務所内


「相良テメェどこほっつき歩いてんだ?」

「いつものマスターのところに行って状況の調査をしておりました」

「あのジジイのところか?それで金の回収は?」

「今日は特に問題ないなかったので、やっておりません」

すると突然鋭利なナイフで腕を切りつけられる。

「グッ!!」

「馬鹿か相良!!何でもっと頭使わねぇんだよ!んなもん誰か送り込んで店荒らして守代を回収すればいいだろうが!」


「そんな真似したら今度は信用問題に関わります。そんな一時凌ぎのようなやり方をしたらどんどん離れていきます。組だって解散です!」


「富樫さん俺もそう思います!」

吉田がすかさずそう言う。


「吉田テメェは親に背くのか!親の言うことは絶対何だよ!」


富樫が蹴りを吉田にしようとするも、すかさず相良が止めに入る。

「相良お前なんで邪魔する」

「富樫さん、今吉田を殴るのは筋が違うと思います。やるなら俺をやってください」

すると、富樫の様子が少し一変する。

「親に盾突き、この組のルールを破るようならもういい。まずは相良がルールを守れる人間に俺が教育してやる」


すると冨樫は事務所から出て車を出す。

「相良さんあの車が向かった方角って・・・」

その時相良は気づく!

「まさか!!吉田、車を早く出せ追いかけるぞ!」


―――相良邸。


一歩遅かった。相良の母は腹を刺されており、息子も背中を刺され血を流している。

「吉田!早くしろ!2人を病院に連れて行け!」

「はい!」

吉田は2人を抱え車に乗せ、病院へと向かう。

「今日までは親だから俺も我慢をしていた。だが身内を狙うとは外道の極み!」

「相良〜!!それが親に向かって言う言葉か!」

「もう親でもなんでもない!ここにいるのは外道富樫!」


そういい、間合いを詰め拳を振りかざすも首を右方向へ素早くかわす富樫、そこからナイフの先が勢いよく飛び相良の肩を突き刺す。

「チィッ!ナイフの刃が飛んでくるとは!」

「面白い刃だろ?こんなナイフの使い方もあるんだよ」

冨樫は懐にあるもう一本のナイフを出し、相良は素早く4箇所刺されてしまった。

「ぐぁぁ!クソっ早えぇ!」

「どうした相良?俺を殺したいほど憎いんだろ?そんな程度で俺に歯向かうなど笑わせる」

「富樫〜・・・」

「ザコが!太ももにナイフ突き刺してやる!」

「ぐぁぁぁぁ!!」

相良は右足の太ももにナイフを刺されてしまい、床に転がってしまった相良に何発も蹴りを叩き込む。


「オラァ!お前の息子も、もうじきで死ぬし、一緒に死ね!」

「ぐぁぁ!クソっ!」

蹴りを叩き込まれている相良を1人の男が駆けつけた事により中断される。

「そこまでだ富樫!」

そう言ってこちらに来たのはなんと寮だった。


「ほぉ〜誰かと思えば寮じゃないか」

「吉田から話を聞いた。相良をここまでやりやがって富樫お前死ぬぞ」

「また神楽坂の話をしてるのか?出てこいって言うんだ。俺の弟を殺しやがった張本人今度は俺が神楽坂を殺してやる!」


「程度が知れる。だったらもし会ったときやってみるがいい。とりあえず相良は引き取るぞ死んだら困るんでな。それとお前のナイフ自慢は神楽坂には通用しねーよ」

寮はそう言い残し、足に刺さっているナイフを引き抜き捨て、相良を抱き上げ車へと乗り込む。

「死ぬなよ相良今助けてやる」


◆◆◆


―病院。


治療の末、相良は助かり一命を取りとめた。ベッドの上で目を覚ます相良。

「相良さん!」

「あぁ吉田・・・すまなかったいろいろとありがとう」

「息子は?おふくろは?」

「息子さんのほうは助かりました。しかしお母さんのほうは」

「情けねぇ、若頭などと名乗っておきながら富樫の行動も瞬時に見抜けねぇとは」

相良は自責の念が激しく迫り、その感情を抑えることが出来ず泣いてしまった。

「相良さんのせいじゃないです」

「吉田悪い、つまらねぇところ見せちまった。ところで寮は?」

「実はその件ですが、今回の一件で冨樫は完全に外道になった。と、相良さんに伝えるようにと」

「寮、借りができたな。丁度よいマスターも準備してくれてるし」

「行くんですね」

「俺が退院したら地図と住所を貰うようマスターから約束してある吉田はそれを貰って来てくれるか?」

そう相良が言うと吉田はマスターのところへ行く。

しばらく経ったある日、相良は退院をし、相良と吉田が落ち合う。


「相良さんどうやらこの辺ですね」

マスターから受け取った地図を見て吉田は言う。

「あぁ、そうらしい」


相良がそう言うと、神楽坂の事務所の前に到着する。すると真っ赤な扉があり、その扉には黒い文字で『怨気満腹えんきまんぷく』と書いてある。この先に神楽坂がいるというのだ。

「怨気満腹どういう意味ですかね?」

と、吉田が相良に聞く。

「ここを訪れる人にとっては、うってつけの言葉だ」

「知ってるんですか相良さん」

「もういい、行くぞ」


◆◆◆


―神楽坂事務所内。


扉を開けると神楽坂は椅子に座り凄まじいオーラが感じざるを得ない、凛とした態度で相良たちの前に現れた。相良もそれを感じ取り、ゴクリと喉を鳴らすと吉田に指示を出す。


「吉田、俺が神楽坂さんと話す。お前は席を外してくれないか」

「解りました」

吉田もまたそれを感じる。

するとジェイクが立ち上がり、吉田を案内する。

「どうぞこちらの部屋でお待ち下さい」


「相良です」

「寮から話は聞いてる。ただ富樫を消す前に確認しておきたい」

「何でしょう」

緊張が走る相良。神楽坂の目を見るもその目はやはり、いつも相良が戦ってきた外道の目つきではなかった。

「富樫を消すと組が崩壊する。その後はどうするつもりでいる?」

「ヤクザを辞めたい。そして俺も今までの生き方を変えたい」

「解った」

そう言うと、神楽坂は立ち上がる。

「でも冨樫は多分逃げてます。どこにいるか存じ上げてるのですか?」

「心配するな知っている。私について来い」

その言葉を聞き驚く相良。事務所を離れ神楽坂は手を後ろに組み歩く。相良と吉田は無言でしばらく歩くと地下室に下りる。



ー続くー




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