最高の調味料

でぴょん

プロローグ 目覚め

 人類は楽な方、楽な方へという思考が蔓延するにつれ、科学の発展を推し進めて来た。科学は人間の生き方を楽にさせるため、日々邁進し、時に人類が驚くほどの結果が生まれさせた。その科学の発展を実生活で感じる機会が多いものは、おそらく自動化であろう。

 本来、人がやるべき仕事も、人の心も洗うと言われる掃除も、人との交流一つである買い物も、自動化が進み続け、人間の体力が衰えようが関係なく科学は、人類の叡智を吸収しモンスターのように成長していった。

 そして料理も自動化の例外ではなかった。

 ある日、誰かが考えた。

「調味料に人工知能をつけてみれば自動で料理してくれるのではないだろうか?」

 人工知能の技術が進んだ現代では不可能では無かった。実際に食品加工工場や冷凍食品工場の機械では、自宅の炊事担当者顔負けの料理が美味しく作られている。仮に工場料理以上の料理を自宅でもっと安価で、手軽に食べれるようになるのだったら、人はどれだけ楽になるだろうか。食材を買ってきて、手をかざす等の簡易健康チェックを行った後、コンピュータによって自動で献立が決められる。そして、数十分待つだけで一流シェフが作ったかのような料理が食べられ、本来レストランで発生する人件費も払う必要がない。時間も金も健康も合理的にコンピュータが判断して、食が楽しめる。まさに一石三鳥の仕組みになるというわけだ。

 だが意志を持ったが故の弊害。調味料達は勝手に調味料同士で優劣を作り上げてしまい、カースト下位の物はカースト上位の物達によって、冷蔵庫で消費期限まで冬眠されようとしていた。

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