第43話
それは永遠のように長い時間だった。
ミヅキの叫びが止まった頃、船内を歩く足音が聞こえて来たのだ。
ドシンドシンと地響きが鳴るような大きな足音に、ハッと息を飲む。
間違いない、あれは鬼の足音だ。
ミヅキの悲鳴を聞きつけてやってきたのかもしれない。
綾の手を取り、立ち上がる。
ここは一本道で、突き当りにあるのが冷凍庫だ。
逃げ道はどこにもない。
「ミヅキ!」
俺は今だ冷凍庫の中にいるミヅキに声をかけた。
逃げ道はないにしても、1人でほっておくわけにもいかない。
「ミヅキ!」
浩成が声をかけながら冷凍庫へと入って行く。
ミヅキが嫌がる声が聞こえて来る。
きっと、中で死んでいる泰明から離れるのが嫌なのだろう。
「ここにいる! あたしは泰明と一緒に死ぬ!」
そんな声が聞こえて来たので、思わずギョッとした。
今まで生き残っていたのに、ミヅキは今自分から死を望んでいるのだ。
ミヅキにとって泰明の死はそれほどまで大きかったのだ。
「死ぬなら次のゲームで死ねよ! ここで無駄に死なれたら俺たちが困るだろうが!!」
浩成の怒鳴り声が聞こえて来る。
それは浩成の本心からの言葉だったかもしれない。
だけど、命を絶つなら粗末にはするなと、今の俺には聞こえていた。
しばらくすると浩成に支えられるようにしてミヅキが冷凍庫から出て来た。
それとほぼ同時に、廊下の奥から鬼が姿を見せたのだった……。
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