ひとつの春 3-10


 連日の風と、今日の雨。

 満開だった梅の花を散らすには十分だった。


 窓から見える梅の木を眺めながら、私はため息をついた。

 ひとつの花の季節が終わってしまったから。


 無表情な木に降り注ぐ春の雨。

 その染み込む大地を見ると、紫色の小さな花が……。


「ホトケノザ!」


 またひとつ、花の季節がやってきた。

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