長編詩~漂着日記

荒れ狂う

波に飲まれ難破


小さな孤島に着いた


孤島で

まず目にしたのは


大きな大きな青い鳥


幸先いいぞ


なんて


そんなに甘くはないのだ...


乗り込んだのは


ボクと

ボクの天敵


これは

神様のお計らい?


いまも

険悪なムード


払拭しようと

試みるが


何しろ奴は

ボクが大嫌い


とりつくしまもない


たったふたり

たどり着いた

孤島


なんとか

協力し合わねば


しかし


乗り込んだのは


ボクと

ボクのこと大嫌いな

きみ...


奴は

名前を

幸村という


真田幸村?


幸村と聞くと

すぐさまそれ浮かぶが


奴は

名字が幸村


幸村


幸村


あれ?


下の名はなんだ?


知らないぞ


教えたくないくらい

奴は

ボクが気に食わん


ボクは、?

なんで嫌われるのか

知りたい


よく言うところの

馬が合わんいうやつやろか


そりもあわん


なんもかんも


たぶん

ボクが

この世に存在することさえ

疎ましいのだろう


なんの因果か

そんな奴とさ

ふたり流され


生きてく術など

なかなか見当たらんわ


ただひとつ

唯一の救い


それは

島が

瑠璃色の海に

囲まれていた


それだけ


でも


今のボクには十分かな


奴とさ

ふたり生きてく


それが

神様からの指令

ならば

従う?


そんなこと考えてる

このときにさえ


奴はボクを

これでもか

睨み付ける


へーへー

さいですか


ここまで意味なく?

嫌われるのも

まあ

本望さ


ああ

何故に 

こんなことに...


生きてれば

当然

お腹がへる


非常時の為に

持ち合わせた食糧も

もう底をつく


ボクは

1日ずっと

ボーッとしてる


幸村が

何を考えてるのか

話しかけてみたくなる


何しろ

出会ってから

話をまともにすることさえ

儘ならない


嫌われるのに

時間はかからず

幸村のこと

何一つ知らないんだ


ただ

幸村は

成績優秀で

眼鏡の似合う

小さな男


なぁ幸村?

なんで嫌うのか

教えてくれよ


普段の生活ならば

他の出来事に紛れて

うやむやになりもするが


ふたりきり

暮らしていると

どうしようもないやるせなさ

襲うんだよ


言うなれば

世界にふたり


その相方に

なにも聞けず

一方的に嫌われまくる


こんな試練

あるかい?


なあ

幸村


まだ

幸村の心は見えず...


ここにきても

多分恐らく  

二週間は口を利いていないだろう


もう

何でもいいから

話したくなる


土下座でも

何でもするから

無視するな


こちらの

怒りも増して

険悪なムード


払拭どころか

ますます暗雲

立ち込め始める


もう食べ物ないよ?

どうする?幸村


声にならん声

虚しく響き

泣きそうになる


切ない


切ない


初恋のあの子に

振られた日より


切ない


苦しい


助けて!


ボクは

知らず知らずに

ヒントを見つけていた


ボクを

すり抜けていったけど

キーワードは

あったのだ


後で

知ることになる

その過ちに

ボクは

背筋がぞっとしたものだ


でも同時に

ホットもした


そして

意味なく嫌われまくる


其処からの脱出だ


考えてもみてくれ


なんの訳も

知らされず


無視して

睨み付けられる


そんな奴と

二週間も

ふたりきり...


どんなにか

過酷な時を過ごしたか


わからない?


だけど

全てに意味は要らず


しかし

全てに意味がある


幸村が

ボクを嫌うのには

深い事情があったんだ


愚かなボク

を嫌って

幸村も

傷付いてた


無視して

心は

痛まぬわけはないのだ


もしかしたら

ボクよりも

つらかった...のかも知れない


幸村


ふたりきり


流されたのには

きっと

意味があるな?


幸村がいない


起きてみると

幸村は姿を消していた


ボクは

あちこち探す


でも

影もかたちも見えない


一人で

途方に暮れる...


昼下がり

幸村が

突然現れて

ドサッとなにかを置いた


ふと見れば

木の実だ


幸村は

ジェスチャーで飲め


そして

自分も

器用に割って飲んだ


ボクも

それに習って

木の実のジュース

口にする


甘い


ウマイ


感激だ


幸村にペコリ

お辞儀した


すると幸村は

着てるもの脱ぎだした


海へゆく

つもりらしい


ボクは

泳げないが

幸村は

泳ぎに覚えがあるらしい


バシャッと入り

海底へ


幸村の

服のあるところに

小さくキラリ 

光るものがある


なんだろう


気になり

見てみると


え?


え~?


光り放つものに

近づき

見ると


え~?


ロケットだった


でも

驚いたのは

その中の写真


初恋の子だ


ボクを振った

初恋の

名前をなんと言ったか


ボクは

フラッシュバック


その子に会うかのように

当時のことに

思い巡らせた


名前すら覚えていない


そんな自分

を恥じながら...


そうあれは

遡ること7年


学生のころ

付き合ってた子


でも

その頃

調度初めて

他で

女ってのを知って

ついつい遊んでしまって

その子に振られたのだ


頭の中

を猛スピードで

駆け巡る


しかし

その子の写真を

幸村が持っている


これは

どういうことだ


ホラーより

怖い


怖いよ~


海へいった幸村は

帰って来なかった


ボクは

この世界で

ただ独り

空腹と言う恐怖

試練と闘う


幸村が居なくなり

どれくらいたっただろうか


野垂れ死に覚悟でいたボクは

すで生きる希望

失っていた


初恋の子を

酷く傷つけ


それが元で?


人生最期の相方に

嫌われる


そして

捨てられる...


涙がポロリ

流れ出した


その時


おーい


おーい


幸村の声に聞こえた


空耳まで

聞こえ始めたか


いよいよか


空に手を掲げ

全てを受け入れる覚悟で...


おーい


おーい


一郎くん


確かに

確かに聞こえる


声は

段々と大きくなり

声の主が現れて


そこには

幸村と

初恋の子と

ボクの家族と



懐かしい顔がそろっていた


なんのことかわからず

目をぱちくり


すると

ボクの姉さんが


「一芝居打ったのよ

神様の提案で


あんたがやった

酷い行いを正す為に


桐子ちゃんの気持ちも考えずに

浮気して遊んで

神様も怒ってたの


どう

頭は冷えた?」


ボクは

突かれた


抑えてたもの

溢れる


泣き崩れた


ごめん


ごめんよ...


ボクは

難破を経験し

心を取り戻した


心は

難破しなかった


幸村に

初めてのように

話しかけたくなる


幸村...


やっと声になる


いま

念願の言葉


幸村?

お前の名前は何て言うんだ?


名前すら知らずに

孤島にふたりきり


乗り越えた

とは言い難いが

救いの手が

差しのべられたのだ


心を

手に

誰もが

誰かと繋がります


幸村は

桐子ちゃんの幼なじみ


ボクこと

一郎は

はっきりとは覚えていないのですが


きみとは昔に

顔合わせしてますね?


一郎は

大事な心


手にしました


傷みを知りました


誰もが

誰かに

繋がります


この世の

不思議

摩訶不思議


だから


きっと


世界は終わらない...

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