第11話

scene11 依代


翌日の夕方。

神楽坂のアルバイトが終わったあと。

神社へ向かいました。


(依代(よりしろ)ってなんだろう?)


八雲先生は桜の精に聞けば教えてくれるとおっしゃっていましたが。

やっぱりなんだか気になります。


「玉ちゃん、依代ってなんなの?桜の精のおじいさんには分かるの?」


「じいさんに聞きはったらすぐにわかるわ~。ワシや天ちゃんが憑いとる、あの白磁の置もんあるやろ。あれかて、依代やからなぁ。

そやから、たぶんじいさんが言わはる桜の枝かなんかに憑きはるんやと思うでー」


「ふーん」


わかりやすいっていうか、やっぱり玉ちゃんの話には威厳も何もないようです。


玉ちゃんはいつものように私の横を歩きます。

周りの人には、馴れた野良猫が私の横をついているように見えるそうですが。



桜の精がいる木の前につきました。


満開を過ぎた桜の木々。


あの古木もまた花びらが散り始めています。

古木の前にまで来ました。

この日もまた、幹の根元がぼんやりと光り、お爺さんが現れました。


「さっそくのお運び、感謝しますぞ。

玉藻さまもありがとうございます。

それで如何様になりましたかな」


「はい、先日お伝えの八雲先生からご許可をいただきました。


先生がおっしゃるには、依代に憑いてお越しくださいとのことです」


「はい、わかりました。


それではこれに依りましょうか」


それは手のひらほどある桜の木の皮でした。


「それではよろしくお願いします」


手のひらにのせた古木の皮から声が聞こえました。

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