第7層
第20話 ああああ
新しいパーティには難なく入れてもらえたよ。
結果的に第7層にまで到達し、謀殺しようとしてきたカリスのパーティを、アークデビルを利用しつつとは言え返り討ちにした。
それだけで即戦力としては充分に評価されただろうし、そんな状況にあってもリサイクルボックスを使わなかった人柄も好意的に受け止めてもらえた。
「将来を誓い合ったワーキャットがいた……もう、いない……ボクには、もう何もない」
リーザのお陰で、このロールプレイにも信憑性が増したよ。何たって今や“事実”だからね。
事実の無いウソっていうは、やっぱり不安定なものだ。微妙な差なんだけど、土壇場で明暗を分けることもある。
やっぱ、使いこなせば便利だよね!
恋人を亡くしたってウソはさ。
大胆な分、信じられさえすれば、効果は覿面だ。
多少疑われたって、疑う奴の方を悪者に出来るしね。
「本当に、何て言えばいいのか……」
パーティリーダーの“ああああ”さんが、痛ましげに頭を振って気遣ってくれたよ。
ホントにそんな名前なのか?
そんなわけないじゃん。
ボクが名前すらもう覚えてないから、ここで便宜的に呼んでるだけだね。
カリスのパーティで懲りたよ。
どうせ作り物の“絆”で操るだけのコマに、上っ面でも深入りすれば、ハゲるほど追い込まれるってね。
まあ、あのパーティでの経験があったから要領が掴めたとも言える。
「大変、だったね。まだ、戦える?」
女性の“いいいい”さんが、項垂れるボクに目線を合わせて言った。
「戦うさ。ロレンツォを殺すまで」
ボクは陰鬱な音声を発した。
心を閉ざした、過去に闇を抱えた男。
クール・寡黙キャラだね。
「そうだ。あの野郎にはこれまでの借りを全部返すんだ!」
“うううう”さんが、鼻息荒く宣言する。
よしよし、志も充分。
打倒アッちゃんどまりだった雑魚とはやっぱ違うよ。
彼らも彼らで、大切な仲間を喪った経験があるようだね。カリスと違って。
と言うか、そーいうヒト達をわざわざ選んだんだけどね。
やっぱ、最低でもロレンツォ殺しを目標にしてくれなきゃ。
ロレンツォを殺すんだ。“魔神王を倒す”のではなく、ね。
「とにかく、第3層で連携を慣らして、すぐに7層を進もう」
“ええええ”さんは、冷静そのものだ。
頼もしいね。
“うううう”さんとはいい意味で対照的。バランスも取れてるよ、このパーティ。
「あのサメを始末した腕前、楽しみにしてるよ」
“ぎんこう”さんは、好奇心も旺盛だね。
何でこのヒトだけ“ぎんこう”呼ばわりかって言うと、パーティの会計役でワナ解除やアイテムの管理を一手に引き受けているからだね。
よし、この即席パーティなら行けるっしょ。
とりあえず、魔神王の所までは、ね。
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