第4話 面接官ごっこ🖤
さて、ボクをパーティに加入させたいと言う“志願者”たちとの面談だ。
最初に、ざっと氏名 種族 HPを並べていくよ。
カリス・ウォレス(リーダー)(ハンターエルフ)
HP:573,000
リーザ・ディズリー(メス猫)
HP:877,000
ナターリア・コル・アニーシャ(愛称:ナタリー)(ドワーフ)
HP:775,000
第九オーク・クランのアルフォンソ(愛称:アルフ)(オーク)
HP:912,000
いずれも分類は“極刑囚”だ。
殺人、放火、強盗、エトセトラエトセトラ……ダンジョン内に無数設置された
外で一体、何をしでかしたんだか。
まず、リーダーのカリス。
全身を深緑の甲冑で覆っている。
鎧はマクシミリアン式で、全体に縦縞のような溝が入っており、重々しい見た目よりは軽量化されているはずだ。
得物は、何の変哲もない鋼鉄製の直剣……なんと、このダンジョンでは超レアが付く神剣はがねのつるぎだ!
オツムの足りないドワーフに、他種族の誰にも監修させず好き放題武器を作らせたらどうなるか?
品質は神だが、仕様段階でクソと言う“ハイスペック・ガラクタ”になる事が多い。
ガラクタとまでは言わなくても、使用者に多大な負担を強いるような構造の、使いにくい武器が作られがちになる。
そんな中で、ギミックを考えるのがめんどくさくなる事もあるんだろうね。
てきとーに、ふつーの直剣を作ったりしちゃうの。
で、皮肉なことに、こーいうのが一番使い勝手が良いと言うオチになっちゃう。
そんな武器を持っている時点で、かなりの上級者と見た。
で、【力】と【体力】でやや劣る為に、そこそこの“現実的な”装甲を選んでいるあたりは理にかなっている。
軽量とは言えフルアーマーで機動力も犠牲にしている点から、恐らくは攻撃魔法を主砲とした後衛タイプと推測される。
このダンジョンにおいて、魔法使いほど重装備となる。野盗や他のプレイヤーで、相当数、検証済みだ。
ハンターエルフは、個体差はともかく種族としてはバランス型と言えるだろう。射手か軽量級の戦士か、天才的な頭脳に恵まれていたなら魔法使いと言う選択肢も充分あり得る。
キミは78点ってとこかな?
次、半畜生の売春婦・リーザ。
やっぱり、白いレオタードは戦闘用の装備でもあるようだ。
武器は、昨晩寝床の横に立て掛けてあった、湾曲した細長い剣……だけど、今は細いワイヤーみたいなのが張られている。
で、矢筒にしこたま矢を搭載しているあたり、弓矢としても使える剣……遠近両レンジに対応した遊撃要員ってとこか。
ステータスはわからないが、お風呂で触った感じ、ワーキャットの例に漏れず速筋がみっちり発達していた。敏捷性はかなりのものだろう。
あとこの武器の形状からして、迂闊に使うと自分の手を切りかねない。
コンマ秒の世界で間違いなく使い分けるだけの【反応】と【器用】は保証する武器でもある。
キミは73点。
次、ドワーフのナターリアさん。
ライトブラウンの髪を野暮ったくポニーテールにした、メガネをかけたチビ。けどやっぱ、骨格は結構がっちりしてる。
得物は、身の丈に合わない特大ハンマー。どんな仕掛なのかは、目視だけでは皆目不明。
あとは、でっかいバックパックみたいなものを背負ってるけど、中身がなんなのかも見せてもらってない。
前衛要員としては、所作の鈍臭さが鼻に付く。
これが二次元だと、いかにもインドア派のメガネっ娘の、日常のドジさ加減と実戦のキレッキレな立ち回りとのギャップがありがたがられるのだろうが……こっちの世界に来てから相当数実戦を積んだ身としては、嫌でも思い知らされている。
所詮、普段鈍臭い奴は実戦でも鈍臭い。これが現実。
とは言え、あのハンマーが伊達と言う事も無いだろう。【力】は相当数あるはずだ。
でなければ、もっと軽量な武器を選定する。
色々戦力は未知数だが、暫定的に31点をつけておこう。
最後に、第九オーク・クランのアルフォンソ……、…………。
88点……!
いやまあ、どこから言及すべきだろうね?
まず、防具か。
重量級のプロレスラーをもう一回り大きくしたような、鉛色の巨体。
それが、布面積が紐も同然の、女物の下着しか装備していない。
「それ、なんでブラつけてんの?」
一応訊いておく。
「ブラじゃないよ! これは、えっと……」
「大胸筋矯正サポーター?」
「そう! それ! 大胸筋矯正サポーターだよ!」
……ウソつけ。
で。
この“あぶない下着”だけどさ。
前に同じの装備してる野盗に襲われた事があるんだよ。これさ、HP補正はすげー高いんだよね。
もちろん、前に見た着用者はメスのワーキャットだったけどな!
まあ、別に、このダンジョンの装備に男女の垣根はない。
服や鎧のサイズは、その時点の持ち主のそれに、自動的にリサイズされるからね。
ちなみに、この上から鎧でも着込めば最強じゃん! って思われるかもしれないけど、重ね着は無効らしい。
ですよねー。
で、極限まで軽量化されたボディに対し、頭部はフルフェイスの兜を装着。
で、左手には、彼の胴体を覆うくらいデカいタワーシールドを装備。
確かに身体は無防備に剥き出しだけど、盾を扱う技量でそれを補うつもりなのだろう。
そして、あぶない下着の極めて高いHP補正と相まって、現実的にもゲームシステム的にも堅牢なタンク役を実現している。
一見して気が狂ってるコーデだが、かなり理にかなった装備だ。
あと、わからないのが武器だ。
何だろう? ダークグレーの、金属製の短い棒?
そうとしか言えない。
殴って使うのか、投げて使うのか、実はこれ筒だったりして中に何か入ってるのか?
とにかく、現段階では何とも評価のしようがない。
モノによってはこのアルフ、ボク的に90点超えもあり得るかもね。
あと、気持ち悪い異種族のメス二匹に精神を苛まれる過酷な環境下での、癒し要員。
そして、ボクの番だけど。
「手っ取り早く、第2層で普通に戦って貰う」
リーダーのカリスが、イケメンなバリトンボイスで言った。
「トラップ等は我々が全て引き受ける。
純粋に、モンスターとの戦いに専念してくれ。
それで、採用するかどうかを判断させて貰うよ」
まあ、話が早くて助かるよ。
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