エルシィの感想その1
イネ科の雑草が濃淡様々な緑色で彩る中、踏み固められた街道が延々と伸びている。
気候は肌寒いが、カラリとした快晴。
冷たく清涼な空気が肺を満たす。
あのダンジョンでは、ホントに淀んだ空気を吸ってたのだなと思う。
ゲームクリア後、色々あって数日の昏睡を経て、ボクは無事に生還を果たした。
で、今は、ツレのエルダーエルフと馬を並べて大陸一周の旅に出たところ。
「こんな、結末が分かりきってる話を聞いて何が面白いの」
隣を並走するエルフの女に、殊更訊いてやる。
お日様の光を一杯に吸ったような金色の、サラサラロングヘアー。
そのくせ、日に焼けたことなど皆無とでも言うような白磁の肌。
女児の頃の丸みを残した、均整のとれた面差し。
瞳の色は、ヒトの虹彩にありえない
ほっそりとした肢体を包む服装は灰褐色を基調としたゆったりとしたローブで、アクセントに金色の刺繍で術式が紡がれている。持ち主に聞くと、これ自体がほとんどの物理干渉を遮断する概念防具であるらしい。
で、ボクが先に投げ掛けた問いにニコニコ顔を返すこの小娘こそ、五種族最強の超越存在・エルダーエルフ。
名を、エルテレシア・トライアードと言う。
長ったらしくて面倒臭いので、ボクはエルシィの愛称を採用して呼んでいる。最初にステータス覗いた時も、そう呼んでほしそうな感じにエルテレシア(エルシィ)って併記されてたし。
こう見えて、数秒でエリクサーとか作っちゃう。
で、アテもない大陸一周旅行。
話題を求めて、あのダンジョンでの一部始終の話をせがまれて今に至る。
で、先のボクが投げ掛けた問い。
ボクは結論から言ってロレンツォを殺してダンジョンをクリアした。
それが分かりきってる以上、どんなピンチを語ろうがドキドキ感はないに等しいわけで。
「それでもいいんです。一つでも多く、レイさんの話をきかせてもらえれば」
要領を得ない返答だ。
これが女王サンドラの統治下だったら死刑になってたぞ、キミ。
まあ、最強のオークでも指一本触れられないのが、彼女らエルダーエルフと言う存在なんだけど。
※ただし、田舎者に限る。
と言うのも、ボクからすれば都心部のエルダーどもほど半端者が多く、そんな負け犬どもの作った街が首都・ペンタゴンシティだと思ってるので。
ホントにヤバいエルダーエルフほど文明が退行して、こーいうイモ娘に成り下がってると言うパラドクスが生じている。
この女に言及していて色々と横道に逸れたが、どこまで話したっけか?
「そろそろ、単独行動に限界が出てくるはずですよね?」
そうそう。
ろくに説明もしてないのに、彼女の方がボクより的確に要点をつかんでいる。
「第1層をコンプリートしたあと、ボクは“パーティ”に参加することにした」
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