第6話 銃道の誘い

 いよいよ高校1年生。恭仁は、慌ただしい学業の日々を過ごし始めた。入学試験の恭仁の成績は中の上程度。気を抜けば忽ち追い上げられて、序列を引っ繰り返される油断できない位置。幸運にもトップクラスの末席に滑り込めたが、恭仁には序列など端から興味も無かった。天辺でもドベでも、進路は決まっているようなものだから。


「倉山クンは余裕でいいよな、家が警察だから。将来安泰じゃん、羨ましいよ」


 クラスメートとの自己紹介から、刺すような皮肉。恭仁は肩を竦めてやり過ごし、飄々と学校生活を過ごした。周囲はお互いにマウントを取り合い、自分の立ち位置を高めようと躍起だ。成績だの実家の太さだの、しょうもない話を笠に着て。


 ある時、鷲津というクラスで成績が5本指に入る男子、の支社長のドラ息子が、金持ち自慢のマウントを取ってきた。恭仁は欠伸をこぼして鷲津の話を半分以上聞き流し、彼を取り巻くたちを憐れみの目で見渡すと、言葉を返した。


「そりゃ凄いね。キミの親が凄いんであって、キミ自身が凄いわけじゃないけど」

「俺を舐めてんのか! お前なんか小指の先でブチ転がしたるわ雑魚が!」


 鷲津は瞬間湯沸かし器のごとく激怒し、拳で殴った。人を殴るのに慣れた所作だ。恭仁は彼の拳を受け止め、受け流し、流れるような所作で即座に腕を極めた。


「試してみる? 5歳から武道やってる僕より、キミの小指が強いか」

「いてッ、いてててッ! てんめぇッこのクソッタレ!」

「貴方たち、何やってるの!?」


 騒ぎを聞きつけた学級委員の女子生徒、伊集院が血相を変え、間に割って入る。


「暴力しか取り柄のねぇ不良のクセに。何でこんな人間のクズが、上流階級の学校に紛れ込んでんだよ。たかが公僕のガキの分際で調子に乗んなよ、捻り潰すぞ」


 鷲津は痛む腕を押さえて恭仁を睨み、ゴミを見る目で捨て台詞を吐いた。


「倉山クンも、入学早々に暴力沙汰とか高校生の自覚あるの? 貴方の居た中学ではそれが当たり前だったかも知れないけどさ、それを高校まで引きずられたらみんなが迷惑するの、分からない? 顔の傷なんか見せびらかして。馬鹿じゃないの?」


 恭仁は生傷の走る顔を強張らせ、お母様に殴られんだ、と咄嗟に言い返そうとして情けなくなり口を噤んだ。鷲津が舌打ちし、伊集院が見下した眼差しで踵を返す。


 そして恭仁はクラスで孤立した。恭仁の誰にも物怖じせずに堂々と振舞う態度は、序列底辺の分際を弁えない身の程知らずと陰口を叩かれた。しかし恭仁は、それらを歯牙にもかけなかった。母親のストレス発散の標的でしかない、家庭内で振るわれる理不尽な暴言暴力と比べれば、クラスの口だけは達者な連中などカカシ同然だった。。恭仁には依然として、学校は天国のような快適空間だった。


 友達は無い。彼女など求めるべくもない。理不尽に殴られぬだけ上出来だ。


「体験入部どうですか!」

「ちょっとだけでも見ていてください!」

「相撲部、相撲部どうぞ!」


 放課後に新入生を待ち受けるは、引く手数多の部活の勧誘。恭仁は上級生の入部の誘いを躱しつつ、学舎を足の向くまま歩き回って探検した。その内に来たことのないフロアに足を踏み入れてしまい、やがて迷子になったことを悟る。


「取り敢えず、1階に降りればどうにかなるだろう」


 階段を降り、窓の並ぶ廊下。左手を見ると、奥には突き当り。手前に研修室があり壁に下がった看板には『射撃部部室』と記されていた。


「しゃ、射撃部?」


 恭仁は面食らった。引き戸の前には、ジャージ姿にポニーテールの上級生と思しき女子生徒が立っており、人気の無い廊下でやる気の無い声を上げていた。


「すいません、えーと先輩。ちょっとよろしいですか。道に迷って――」


 不穏な部名に恭仁が眉を顰めつつ声をかけると、気怠そうな顔の女子生徒が恭仁に気づいて、目を留めた。女子生徒は眠たげな目をカッと見開き、獲物に狙いを定めたハイエナのように白い歯を剥き出し、獰猛な笑顔で恭仁にドドドと駆け寄った。


「キミ1年生? もしや射撃に興味ある? 見学だけでもどうぞ! ね!」

「いや見学とかそういうんじゃ――」

「遠慮しなくていいから寄ってらっしゃい見てらっしゃい! ね! ね!」


 先輩女子生徒のグイグイ来る勢いに押され、恭仁は人攫いもかくやの勢いで部室に引きずり込まれた。窓にずらりと遮光カーテンの引かれた研修室、教卓の前に箱型のブルズアイ標的が目線の高さで並べられ、生徒たちが屯する部屋の後方までの間には10メートルほどの距離が取られ、シューティングレンジが設えられていた。


「射撃はね、体格も性別も関係なく誰でもできる、奥の深いスポーツだよ」


 女子生徒が胸を張って得意げに語ると、パシュンと電子合成された安っぽい銃声が響いて恭仁を出迎えた。彼は直ぐ帰ろうと思いつつ、始めて目にする世界に好奇心が沸き上がり、部室を観察する。立って撃つ者も居れば、座って撃つ者も居た。誰もが競技用ライフル――分厚い木製銃床ストック重銃身ヘビーバレル、調整可能な覗き穴型照準器ダイオプターサイトの銃――を抱えて、神妙な顔で標的に向かっていた。硝煙とも銃声とも無縁の空間だった。


「ライフルとか初めて見るでしょ? ビックリした?」

「射撃って不穏な言葉に驚きましたけど、弾が出ない物もあるんですね」

「ビームライフルって言うの。弾の代わりに電気で光を撃つから、安全なんだよ」


 恭仁は感心して頷き、観察を続けた。見るからに重厚そうな原色のコートをまとう者たちが、弓を引くような姿勢で左半身を標的へ向けて立ち、銃のグリップを右手に握って先台を左手で持ち、左肘を腰に預けた姿勢で銃を構える。


「何だか凄い格好ですね」

「競技射撃って、普通の人が想像するような射撃とは違うからね。部員の子が着てる射撃コートはガッチリ硬くて、あれを着ると構えがビシッと決まるんだ」


 射手が立射姿勢で木製銃床を肩と頬に押し当て、構えられたライフルが狙いを定め撃発されると、標的のブルズアイの上に鎮座する王冠マークが点滅した。


「あれが点いたら、10点に当たったってこと。1回の射撃で取る最高点ね」


 射手のやや前方の机に置かれた小さな標的のような機械が、ブルズアイの着弾点と点数を示す数字を、赤く光らせた。射手の傍らにも合板と鉄板を張り合わせたような機械が鎮座し、レシートじみた紙を吐き出している。


「みんなが立って撃ってる、ってわけじゃないんですね」


 椅子に座り、制服姿で机上に肘を突いて撃つ者たちを恭仁が示す。その中に短髪の女子生徒の姿を認め、恭仁は瞠目した。学級委員の伊集院だ。射撃に興味があるとは意外だ。彼女は射撃に集中しており、恭仁に気が付かない。


「競技では立って撃つけど、それより初心者はまず銃に慣れないとね。最初は重くて構えることもままならないから。私も最初はああやって撃って練習したモンだよ」


 恭仁は伊集院の横顔から点数盤に視線を移した。射撃音。9時方向に4点。


「興味沸いた? やってみない? 今はちょっとライフルの射座が満席だけど……」


 恭仁は強張った笑みで肯定も否定もせず、射座を見渡す。顔見知りの隣で撃つのは気が進まない。射座の奥に目を凝らすと、窓際でごついピストルを構える男子生徒に視線が留まった。部屋の奥で撃つなら伊集院にも気取られまい。


「へえ。ライフルだけじゃなく、ピストルもあるんですね」

「よく見てるね。もしかしてピストルに興味ある?」

「何だか、ライフルより手軽そうな気がするので」

「みんな最初はそう思うよね。でも実際は……まあ体験した方が手っ取り早いね」


 女子生徒が恭仁を手招きし、ごった返す射座の後ろを縫うように通り抜けて、奥でピストルを構える、小柄な男子生徒の側に辿り着いた。彼はライフルを撃つ部員とは異なり、射撃コートでなくジャージを着ていた。手を包み込む形をしたグロテスクに大きいグリップを片手のみで握り、ライフルより一回り小さい箱型標的を狙い撃ち、ブルズアイの中心を射止めれば、標的下部の緑ランプが赤く点滅する。


「地頭園クン。竜ヶ島第一高校射撃部、ビームピストル射撃のエースだよ」

「うっす。どうかしましたか、岩切先輩」


 岩切という女子生徒の声に、地頭園という男子生徒が振り返る。彼の顔には眼鏡を思わせるブラインダーという道具が掛けられ、左目が隠されていた。


「体験入部だよ。ピストル射撃、興味があるんだって」

「へえ。難しいけど大丈夫?」


 地頭園は目隠しを跳ね上げると、恭仁と顔を見合わせ息を呑んだ。恭仁は素知らぬ仏頂面で行儀よく頭を下げ、隣では岩切が何故かドヤ顔になり、腕組みして頷いた。


「お願いします」

「エースのお手本見せちゃってよ。ね!」

「うす」


 地頭園が頷き、左手をポケットに入れると、右手で銃を構えた。ライフルの構えを鏡映しにしたような、右半身を標的に向けた姿勢。足を肩幅に開き、腰を後傾気味に据え、ピストルを持つ手を真っ直ぐ伸ばし、銃口先端から左半身まで一直線の姿勢を形作る。首だけ90度回して、視線はピストル上部の照準器を貫き標的を狙った。


「兵隊とかお巡りさんの構え方とは全然違いますね」

ような感じだよね」


 パシュン。地頭園が引き金を弾くと、点数盤のブルズアイの中心の黒点から僅かに12時方向へずれて赤点が灯り、8点と表示された。地頭園は撃ち終えた後もそのまま10秒以上はピストルを構え続け、長い残心を終えてから、銃口を静かにテーブルへと下ろす。彼の口は、不服そうな真一文字に引き結ばれていた。溜め息がこぼれた。


「ちょっと緊張したでしょ」


 地頭園は口惜しげに頷き、テーブルのフェルトを張った天板に銃口を置くと左手でピストル上部のレバーを往復させた。標的に再び構えて撃つ。先ほどの着弾点よりも下方、標的の中心が赤く点滅し、点数盤に10点の表示。地頭園は表情を和らげた。


「彼は競技会の入賞を狙ってるから、真剣に練習してるけどね。始めの内はあんまり気負わないで、撃つのを楽しむことが大事だよ。誰でも最初は初心者だから、ね」


 恭仁は岩切に後押しされ、地頭園の横に進み出て説明を受ける。


「前の照星コレと後ろの照門コレを揃えて狙う。高さだけじゃなく、左右の隙間も同じように合わせないと、弾は狙い通りに飛ばない。構えた状態で照準線が真っ直ぐ揃ってて、後は撃つだけの状態まで持ってこれれば理想だけどね。銃口を突き出したら、自然に下げて、黒点を追い越して止める。丸の中心じゃなくて底に合わせる。一直線にした照星と照門の上に黒点を乗せる感じかな。構えながら吸った息を吐きつつ、引き金も絞り始めて、狙いが落ち着いたタイミングで静かに絞り切ると、当たる」


 地頭園は矢継ぎ早に説明しつつピストルを構え、上からゆっくりと銃口を下ろして狙いを定め引き金を絞り、空撃ちと残心。剣道の素振りに似ていると恭仁は思った。


「狙いがピッタリ合ってから、引き金を引いちゃいけないんですか?」

「難しいね。片手で持った銃は動き続けるから、狙いを定めた後に引き金を絞ると、その勢いで狙いがブレる。同じ姿勢を保つのがとにかく大事だ」


 分かったような分からないような説明だ。恭仁は曖昧に頷きピストル型の電子銃を手に取ると、ズシリと取り落としそうになる重量に驚いて、目を見開いた。地頭園が横合いから手を伸ばし、照門前方の装填レバーを前後させる。レバーの穴に篏合する閂のような部品が動きに連動して引き起こされ、撃鉄のようにカチリと音を立てた。


を動かすと撃てる。毎回これをやらないと、引き金を引いても意味がないから気をつけて。引き金を引けば手応えがある。じゃあ構えて、撃ってみて」


 恭仁はピストルを見様見真似で構えて、照星と照門を横一列に並べて標的の黒点の6時方向を狙った。手の内で照準が小刻みに動き、狙うのが容易ではない。


 カチン。引き金を絞り切る瞬間、金属が擦れてバネ仕掛けが弾ける感触があった。恭仁はパシュンと響く銃声を聞きつつ残心して、ゆっくりとピストルを下ろした。


「「……8点」」


 地頭園と岩切が同時に呟く。点数盤には中心から10時方向へ僅かにズレて赤点が灯り、先程の地頭園が撃った時と同じ点数が表示されていた。それは地頭園の撃った8点と同じ点数ではあるが、撃ち慣れた地頭園と初心者の恭仁では、意味が違う。


「まぐれですよ」


 ……それが、恭仁と射撃との初めての出会いファーストコンタクトだった。


「マジか」

「最初は標的に当たらなくてもおかしくないけどね」


 地頭園と岩切が驚きの顔を見合わせる。明らかに2人の顔つきが変わった。


「示現流の稽古で、手の力を鍛えてたお陰ですかね」

「示現流? 何それ?」

「地頭園クン、知らないの? 示現流って剣道みたいなあれでしょ?」


 岩切が徒手で素振りの仕草を見せると、恭仁は無感情な顔を微笑ませた。


「正確には少し違って、剣道より古い古武術なんです。まあ剣道も小さい頃は祖父の道場で習っていましたが。示現流を習ってかれこれ5年くらいです」


 銃を再装填し構え、撃って残心し、再装填しまた構えて、撃って残心する。


「他にも、空手とか合気道とか柔道とか、親の勧めで色々やってます。でも、一向に上達しませんが。だから心の強さと、何よりは自信ありますよ」


 恭仁がはにかんだような苦笑で振り返ると、地頭園が相好を崩して頷いた。


「あー、道理でお前ガタイがいいわけだ。俺はてっきり不良かと思ってたよ」

「凄いね、倉山クン。お祖父さんの道場って、そういう家庭なの?」

「家系なんです。父も祖父も曽祖父もそのご先祖様も、ずっと警察官です」


 岩切と地頭園は沈黙する。何もそれは恭仁の話に驚いたからだけではない。恭仁は地頭園の構えを脳内でシミュレートし、射撃を反復する。地頭園が訝しげな眼差しでプリンタを横目に見て、レシート様の感熱紙へと点数を印字した記録用紙を千切って確認すると、集計した点数を見てフムンと唸り、岩切に用紙を手渡した。


「55点。1発も0点が出てないな。お前もしかして射撃やったことある?」

「初めてです。先輩の指導を聞いて、撃ち方を真似してみただけです」

「凄いよ、倉山クン! 初心者とは思えない。スジがあるんじゃないの?」


 岩切が歓声を上げ、地頭園が少しむくれた顔を見せる。誉め言葉には接待の意味も含まれていたが、記録用紙に刻んだ結果は、紛うことなく恭仁の素質を示していた。何もかもが出来過ぎていた。お膳立てが揃っていた。恭仁が今まで、血の滲む努力で習得した武道のおかげで、全く畑違いと思える『射撃』を覚える素地が出来ていた。


「1発当てただけならまぐれでも、10発当てたならもうまぐれじゃないね」


 岩切が値踏みする眼差しで恭仁に微笑む。彼女の笑みがハイエナのような獰猛さを帯びて歯を剥き出し、たじろいだ恭仁が両手を上げて後退る。


「あ、あの僕もうそろそろ帰らせていただきま……」

「これって運命の出会いじゃない!」

「何言ってるんすか、岩切先輩」

「倉山クン、入る部活ってもう決めてあるの?」

「いえ、決めてはいないんですが」

「ならやっぱり射撃部、入るべきだよ! 射撃やるべきだよ絶対! ね!」

「岩切先輩、食いつき過ぎっすよ。倉山クンが引いてるじゃないっすか」

「だって絶対才能あるのに、射撃やらないなんて絶対勿体ないよ!」

「んーまあ確かに。お前ちゃんと練習を積めば、直ぐ上手くなるは思うけどね」

「ほら! うちのエースの太鼓判、やっぱり間違いないよ! ね!」

「ちょっち待って、俺が言い出したみたいな風に言わないで下さいよ」


 恭仁は引き笑いを浮かべつつも、内心では激しく揺れ動いていた。世辞でも才能があると言われた。射撃をやって楽しかったのも偽らざる本音だが。


「ご……ごめんなさい! 冷やかしなんです。僕、武道の稽古が忙しくて、射撃部で練習できる時間は無いんです。歩き回ってる内に迷い込んで、断り切れずに部室まで入っちゃって。先輩たちに、時間を割いていただたいたのに申し訳ないです」


 恭仁が平謝りすると、岩切と地頭園が我に返った顔で振り返った。


「いやそんなマジに謝らなくたっていいけど。事情は人それぞれあるだろ」

「でもやっぱり勿体ないよ! 私はやってみるべきと思うワケ。ね?」

「仕方がないじゃないですか先輩、こいつも後腐れあって帰り辛いでしょ」

「なーに地頭園クン。可愛い後輩が入ってくれるのがイヤっての?」

「いやそういうワケじゃないですけど」


 マズい、このままでは丸め込まれてしまいそうだ。恭仁がそう思った時には、鞄を引っ掴んで、平身低頭に頭を下げると、先手を打って駆け出していた。


「本当にすみません! 今日はありがとうございました! 失礼します!」


 周囲の部員たちが呆気に取られるのも構わず、恭仁は部室を飛び出した。


「待って、ちょっと待って! 待て!」


 岩切が後に続き、恭仁を逃すまいと後を追いかけ、彼の前方に回り込んだ。


「ハァ、ハァ、ハァ……何とか追いついた」

「い、意外と足早いですね……」


 思わずたじろぐ恭仁に、岩切が真剣な眼差しでズズッと距離を詰めた。


「あのさ、倉山クン」

「え、えっと……何度頼まれても、入部するのは」

「そうじゃなくて。キミさ、本当に射撃、やる気、ない?」

「ですから……」

「話は最後まで聞いて。犬吠坂って場所に射撃場があるの知ってる? 私も中学生の頃は、良く練習で撃ちに行ってたよ。キミも部活は無理でも趣味の範囲内で、時間がある時、少しずつでもいいから撃ってみたら。って私は思うな」


 初耳の情報に恭仁が目を丸くすると、岩切はふっと相好を崩した。


「興味あるって顔じゃん。遊びに行ってみたら。射撃って、楽しいよ」


 彼女は言い残すと、してやったりの表情で颯爽と部室に戻って行った。

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