ドリア

「ヒカル、焦げ目がついた」

「じゃあ出していいよ」


 鍋掴みで慎重に窯から鉄板を取り出すと、ふつふつと音を立てる、ビーフシチューで作ったドリアが出来上がっていた。

 スプーンを皿の底まで一気に差し込み、ぐっと持ちあげる。チーズとシチューと黄色い米が(クスクスという小麦粉で作った粉食だと後で聞いた)が程よく混ざり合って、スプーンの上で未だに香ばしい湯気を立ている。面倒だったが、フーフーと息を吹きかけて口に入れる。それでもやっぱり熱かった。かといって冷めるのを待って食べるだけの辛抱もない。結局、舌と咥内に鞭を打ちつつ、犬のように息荒くハフハフと食べる事になる。

 だってドリアは熱い内に食べるのが華。隣で顔を林檎色にしている恋人がそう教えてくれたから。

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